2019年3月2日韓 昨年十一月の統一地方選挙で国民党大勝の流れをつくった、韓国瑜・高雄市長が三月に中国本土南部の数都市を歴訪することが決まった。中国・習近平政権による中台統一への圧力が高まる中、蔡英文政権は韓市長が中国側に取り込まれることを警戒、行政院(内閣)大陸委員会(陸委会)が「地方首長に権限はない。いかなる取り決めもするな」と警告した。(写真は自由時報のキャプチャー)

 韓市長は「物を売りに行き、人を呼ぶだけ」と述べ、高雄産農林水産物の中国本土への売り込みと、青年や起業家ら人的交流の活発化が目的と釈明。中国南部のどの都市を訪れるかは明らかにしていないが「経済力のある都市」と語り、経済交流が目的であることを強調している。

 韓市長は、高雄経済発展のため中国経済に依存する姿勢が鮮明で、与党・民進党のベテランの林濁水・元立法委員(議員)は「一切を中国に頼るのは、馬英九(前総統)の海賊版」とこき下ろされた。

 韓市長の政治的にも蔡英文政権に比べ中国寄り。習主席が今年一月初めの演説で、「一つの中国原則」を口頭で確認した「九二コンセンサス」を前提に、高度な自治を認める「一国二制度」を受け入れて統一を急ぐよう台湾に呼び掛けた。蔡政権は直ちに拒否。九二コンセンサスは存在を認めていない。韓市長は「九二コンセンサス」を、中台関係を安定させる重しに例え、不可欠の取り決めとの見方を示した。

 韓市長は、無党派の柯文哲・台北市とともに二〇二〇年の総統選挙で、有力候補者とみられており単なる地方首長でない。今後の中台関係の流れを占う上でも、両市長の発言は内外から強く注目されている。政権としても、韓市長が中国側に何かの約束をさせられては大事となる。

 蔡英文政権は、韓市長の動きに戦々恐々。 陸委会は「各地方政府は、陸委会からの権限付与がなければ、中国本土のいかなる個人、法人、団体その他の機関と、いかなる取り決めもできない」との異例の声明を出した。