2019年7月03日爆 イラン沖のホルムズ海峡近くで六月十三日、台湾の石油大手、台湾中油(CPC)がチャーターしたタンカー「フロント・アルテア」が攻撃を受けた事件で、台湾に電力危機の懸念が急浮上している。民進党・蔡英文政権が前のめりで進める脱原発政策のせいで、発電の天然ガス依存が高すぎるためだ。(写真は中国時報のキャプチャー)

「フロント・アルテア」は魚雷とみられる攻撃を受けて炎上した。乗組員は避難して無事だったが、積み荷のナフサ七万五〇〇〇トンの状況は不明。ディーゼル油や化学工業などの重要な原料だが、台湾中油は、在庫は十分ある上、七月末に米国とアフリカから調達できる目処がたったとして、供給不足の懸念を打ち消した。

 しかし、攻撃を受けたのが液化天然ガス(LNG)タンカーだったら大事だった。台湾の備蓄量は石油の百五十日、石炭の三十六日に対し、天然ガスは七日から十日しかない。しかし、発電用エネルギーに占める割合は、石炭の四十五・五%、石油の四・四%に対し、天然ガスは三十四・三%と、既に三割を超えている。

 天然ガス依存が高いのは、原子力発電を減らしているため。大気汚染の恐れとCO2削減の公約のため石炭火力は決して増やせない。蔡政権の公約通り二五年までに脱原発が実現すれば、天然ガスは発電全体の五〇%を超えてしまう。その時、必要なLNG船は年間四〇〇隻。毎日一隻ずつ滞りなく台湾の港に入らねばならない。

 台湾では二〇〇二年にもLNG船の手配ミスから天然ガス不足が発生。政府傘下の台湾電力が、製造業の大口利用者への電力供給制限を一方的に宣言し、経済界から猛烈な批判を浴びた。この時は、台湾電力トップの辞任で済んだが、民生用の電気が止まっていたら、パニックが起きた恐れもあった。
これに対して核燃料の備蓄は五百五十日分。米国とイランの緊張が高まれば、台湾があっさり原発に回帰する可能性もある。

★参考情報★
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