2019年7月03日韓 台湾総統選挙で、最大野党、国民党の最有力候補であるEMS(電子機器受託生産)世界最大手の鴻海精密工業の郭台銘会長と韓国瑜高雄市長が暗闘を繰り広げている。(写真は筆者撮影)


 郭会長と韓市長は、実は同じ板橋国民小学校(新北市)の先輩、後輩の間柄。十八年十一月末の台湾統一地方選挙で、韓国瑜氏が圧勝したころまで、人は毎日のように電話で連絡を取り合うなど熱々仲だった。しかし、郭会長が四月中旬、事前に知らせず突然出馬宣言し、国民党から承認を受けると、二人の関係は冷却化した

 絵に書いたような「ポピュリスト政治家」である韓市長は六月、台北、東部・花蓮、中部・雲林県で、大衆動員による総決起集会を開いて総裁選出馬を表明した。大衆人気と動員力を見せつけて、国民党予備選挙を有利に運ぼうとする魂胆だ。

 国民党はヒエラルキーが厳格だ。馬英九前総統を代表格とする、党中央のエリートは、韓候補をチンピラ扱いして嫌っている。学歴は低く、一時、立法委員(国会議員)を務めたこともあるが事実上引退し、長らく台北市の青果市場の社長を務めてきた。

 郭会長も、出自は庶民で学歴も冴えないが、四十年でホンハイを世界的な大企業に育て上げたカリスマ経営者。国民党に多額の寄付もしており、国民党の候補としては資格十分だ。

 国民党中央のお気に入りの郭候補に、末端党員の圧倒的支持を受け、歯向かっているのが韓市長だ。総決起集会では「庶民総統」を自称し、エスタブリッシュメントと対決する構図を故意に演出。党の団結を乱す動きとして、国民党支持者からも反発が出始めた。

 郭、韓両候補とも親中国派なのだが、中国共産党は韓候補を推しているフシがある。台湾のメディア王で、中国べったりの実業家、旺旺集団の蔡衍明会長が全力で韓候補を応援、総決起集会も自ら支えているからだ。蔡会長は一方で、傘下メディアを使って郭氏の攻撃を執拗に続けている。蔡英文政権の高官は「蔡会長が中南海の意向に反するはずはない」と話す。


★参考情報★
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