2018年7月5日林「台湾武力統一はありえず」ーー。陳水扁政権時代に国防部副部長(文官)を務めた国際関係の専門家で、中国人民解放軍に詳しい林中斌さん(76)がこのほど、米公共放送ボイス・オブ・アメリカのインタビューに応じ、米朝首脳会談後のアジア情勢の見通しについて語りました。(写真は風伝媒のキャプチャー)

 中台関係が緊張する中、2020年にあるともいわれる、中国による台湾の武力衝突について、林氏は「絶対にありえない」と断言しました。

 林さんによれば、「戦わずして勝つ」が最高の兵法であり、武力統一により経済を破壊し、住民を殺傷して人心を離反させれば、取り返しがつかなってしまいます。ミサイルで台湾を焦土にできる実力を後ろ盾にしながら、経済、外交、心理、観光、宗教など様々な方法を使えば、台湾人の心をつかむことができます。

 上策は「戦わずに統一すること」、さらに上策なのは、台湾人も気づかないうちに取り込んでしまうことだそうです。確かに若い人を中心に、中国を羨ましがる台湾人が増えているような気がしますが、「統戦」の成果なのかも知れません。

 とにかく林さんの結論は「武力統一を考えるほど、中国はバカではない」ということです。それに、林さんによれば、武力統一を叫んでいるのは、評論家ばかりで政府は口にしたことがないそうです。

台湾旅行法と米台軍事交流

 米国が「台湾旅行法」成立させて高官の往来を可能にしたり、軍事交流を活発化させているように見えます。しかし、林さんによれば、米中は核兵器を持つ大国同士のため「両国は決して一線を超えない」と述べ、米台関係は今後も特に変化はないとの見立てです。

 「台湾旅行法」は議会が可決しただけ。米国で議会と行政とは別もので、可決と実行は全然違うそうです。

 軍事交流も、米台はこれまでも非公式に交流を重ねてきました。今後の違いは、米軍人が制服を着るか着ないかです。林さんは「米国人は現実的なので、制服を着るという表面的なことにこだわらない」と見ています。今後も、目立たない形で、台湾への協力を続けるだろうということです。

習近平氏は権力にしがみつかない

 林さんのインタビューで興味深いのは、習近平氏に対する評価です。林さんによれば、意外なことに、習近平氏は権力にしがみつきたいとは、考えていないそうです。

 その理由は、習近平氏の父親の習仲勲氏の名を汚さないため。中国で習仲勲氏は、まっすぐで公正な人物と評価され、今でも尊敬されています。

 林さんによれば、習近平氏は、父親の歴史的な評価を汚すことを何よりも恐れており、権力にしがみつく姿をさらす気はないのだそうです。

 ただ、習近平氏は、現在の中国は、穏やかな文人ではとても統治できないと考えており、後継者が受け継げるよう、安定した党と政府の体制をつくろうと、躍起になっているとのこと。

 林さんによれば、国家主席の任期を撤廃したのも、そういう体制づくりの一環で、憲法なんて彼が安心するまで今後何回も改正するだろうということです。

 単に2022年以降も権力にとどまる目的だけなら、党総書記と中央軍事委員会の地位で十分じゃないかというのです。

 林さんによれば、とにかく今の習近平氏は国内問題で手一杯なんだそうです。台湾統一問題は、国内情勢が良くなれば、習近平氏が自ら語ったように「自然と解決」するとみられます。

 ですから林さんは、少なくとも習近平氏の任期中、台湾統一に踏み切ることはないだろうとみています。

  林中斌さん: 1942年生まれ。台湾大学地質学科卒。米ジョージタウン大学で政治学博士号取得。行政院大陸委員会第一副主任委員、国家安全会議諮詢委員、国防部軍政副部長などを歴任。専門は中国軍事、中国外交、中国政治、中台関係、国際関係。


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