2019年10月27日戦 台湾軍による米最新鋭M1A2Tエイブラムス戦車百八両の購入について、立法院(議会)は、国防省の当初の見積りに基づいて四〇五億元(約一四〇〇億円)の予算を可決した。しかし、国軍が再度試算したところ、実際の費用は予算を二百億台湾元(約七百億円)も上回ることが分かった。蔡英文総統が直ちに予算捻出に全力を挙げるよう指示したが、立法委員(議員)の一部からは、選挙対策で予算が水膨れしたとの指摘が出ている。(写真は風伝媒のキャプチャー)

 台湾独立志向の蔡総統にとり、米国製最新鋭戦車の購入は中国への強硬姿勢を際立たせるため、来年の総統選に有利に働く。また、国防予算の拡大は公共投資の一種として産業発展に役立つだけでなく、経済界から票を集めるため強力な武器となる。

 M1A2Tは、現在、世界最強の戦車とされるM1A2戦車の台湾バージョン。車両間情報システム(IVIS)や命中率が高い百二十ミリ砲を搭載。これまでより台湾軍の水際での戦闘力が格段に上昇するため、仮想敵の中国軍は、従来の上陸作戦プランの練り直しを迫られる。また、対抗する装備が増えるため、中国軍が台湾海峡を渡る時間が長くなり、台湾や米軍にとって準備の時間が稼げる利点があるという。

 国軍関係者によると、米側はM1A2のエンジンを、ディーゼルではなく米国と同じガスタービン式を採用するよう求めてきた。台湾軍は現状で保守の能力がなく、新たに担当部門を新設するほか、部品など新たな調達が必要となるため、費用が膨らんだという。

 専門家からは、予算の増額分は合理的な範囲内との見方も出ている。ただ、台湾の機甲部隊は現在、年間二百発程度の射撃しかしないのに、M1A2T向け弾薬の生産量が年間五千発と見積もられるなど、不合理な内容を含んでいる。装備開発機関、国家中山科学研究院の元高官は「多分に総統選を意識したもの」指摘している。

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