2019年10月27日A 犯罪容疑者の中国移送を可能とする「逃亡犯条例」改正案に反対する香港大規模デモで、中国の武装警察部隊が武力鎮圧に踏み切った場合、香港で活動を続ける米中央情報局(CIA)の大部隊が、米国の対台湾交流窓口である米国在台協会(AIT)の台北事務所に退避するとの見方が出ている。(写真は風伝媒のキャプチャー)

 各国情報機関の事情に詳しい軍情報筋によると、香港は国際金融センターであるとともに情報収集の拠点で、CIAのほか英秘密情報部(MI6)、台湾の国軍情報局などが外交、ビジネス、文化交流の名目で多数の人員を香港に送り込んでいる。

 うちCIAは香港で七十年近く活動を継続。現在はロシアで暮らす米国家安全保障局(NSA)元職員のエドワード・スノーデン容疑者の暴露情報によると、米総領事館が活動拠点となっている。軍情報筋は「CIAは、他国の数倍の三百人以上を派遣しているもようだ」と話す。

 近年、対テロ戦争の終結と、中国の台頭という地政学的な状況の変化に伴い、英米などの西側情報機関が、バンコク、香港、それに中国・華北、東北に近い東京に、人員と資源を集中し始めた。しかし、資金の流れの自由さや、中国本土に隣接しているため、情報収集拠点として香港の重要性は東京、バンコクをはるかにしのぐという。

 しかし、中国が香港デモの武力鎮圧に踏み切った際、ついでに香港の西側情報機関の一掃に乗り出すのはほぼ確実。米国の場合だと、正規の外交官約百人を除いて身の危険にさらされる恐れがある。

 各国とも、万一の武力介入に備えており、英国、オーストラリア、カナダは書類を破棄した上、情報機関員を一時、バンコクに避難させる計画だ。しかし、米国は、中国と友好関係にあるタイでは、身分の秘匿が困難と判断しており、台湾を退避地に選ぶ可能性が高いという。

 AITの台北事務所は、内湖地区にあり敷地面積五~六ヘクタール(ha)。二〇〇九年から約十年の歳月をかけて建設した新庁舎が昨年九月にようやく完成した。見た目は要塞のような建物で、地上部分は小さいものの、地下施設がどのぐらいの規模なのか、台湾政界の注目を集めてきた。CIAの大部隊が移転しても、親米の蔡英文政権なら政治的な障害がまったくないことも、台北が避難地に選ばれる理由だという。


★参考情報★
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台湾独立支持の香港人、過去最高の四十四%
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