人影もまれな暗い横断地下道で、大きな黒犬が牙をむいてほえかけてきた。毎朝、ホームレスの中年男性に寄り添っているヤツだ。冷たいコンクリの上に、薄い布団と毛布で眠る主人の脇で、いつもはおとなしくうずくまっている。 前日朝は誰かに通路を追い立てられのだろう。地下道の入り口で、寝具を抱えぼんやりたたずむ男性と犬を見た。今朝は主人を守ろうとしているらしく、気が立ってる。台湾はおとなしい犬が多いから、随分たじろいだ。頼もしい用心棒といえる。 南国台北も冬は寒く、横断地下道で眠るホームレスが多い。襲われる心配もあり、バイク用のヘルメットをかぶる人もいるが、気休めにしか思えない。くだんの男性は子分に見張りを任せて、いつもぐっすりお休みだ。黒犬が怒ると怖いので、主従の脇を抜き足差し足すり抜ける日々だ。(井)(25日、NNAテイクオフ)