2020年6月4日火 中国軍との水際決戦を有利に進めるようと、台湾海軍は米ボーイング社製の最新鋭対艦ミサイル「ハープーン」を計十セット以上購入する計画をまとめ、国防省が審査を始めた。(写真は上報のキャプチャー)

 海軍が購入を計画するハープーンは、航空機と、艦艇、潜水艦、陸上のそれぞれから発射できる計四タイプ。実現すればハープーンの四タイプを全部購入するのは、世界でも台湾が初めてとなる。米政府が、ハープーンの製造元のボーイング社を助けるため、台湾に売り込み、台湾が配慮したとの見方も出ている。

 世界の兵器市場でボーイングの主力商品は、F15とF18の両戦闘機。どちらも台湾空軍の垂涎の的だが、攻撃力が強力過ぎるため、台湾への売却がなお制限されている。代わりに、どちらというと防衛的な兵器であるハープーンが勧められたもようだ。

 台湾は自らも高性能ミサイルを開発済み。兵器開発・製造機関の国家中山科学研究院が、対艦ミサイル「雄二」と超音速対艦ミサイル「雄三」を開発。対空ミサイルの「天弓」を含めて、他国製に遜色ない優れた性能を誇るが、政策的な制約で輸出は禁じられている

 海軍がハープーンを選ぶと、国家中山科学研究院には大きな打撃。ただでさえ少ない販路が、さらに狭まる。主要兵器の国産化を進める、台湾の政策に逆行するとの指摘も出ている。

 ただ、ハープーンが対艦攻撃だけでなく、強力な対地攻撃力を持つことも選ばれた理由とみられる。ハープーンは、「沿岸目標制圧モード」に切り替えると、陸上や港湾へ高精度の攻撃が可能となる。特殊弾頭を取り付けると、沿岸陣地や防空陣地、飛行場、港湾施設、船舶などの破壊力が大幅に高まる。

 台湾軍は、中国軍の来攻を察知した場合、中国本土の沿岸部約百キロの範囲で、敵地攻撃を行うための装備の強化に取り組んでいる。中国軍の上陸部隊が沿岸に集結したり、艦船が集まったりしたところを各種のミサイルで集中攻撃し、台湾沿岸に殺到する敵軍を少しでも減らして、水際決戦で有利な戦いを展開する狙いがある。ハープーンが目的に合った兵器であることは間違いない。

★参考情報★
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