台湾が領有権を主張する釣魚台(沖縄県・尖閣諸島の台湾名)付近で、十二カイリ内での漁を繰り返す自国の問題漁船七隻に対し、総統直属の台湾版NSC(国家安全保障会議)の国家安全会議(国安会)が、異例の徹底監視を続けていると一部メディアが報じた。

自国「領海」への出漁規制は批判を招き兼ねない。だが、蔡英文政権は、問題漁船が日本との関係を悪化さないよう腐心している。

 七隻は北部宜蘭県にある蘇澳漁港が母港。同漁港は、尖閣諸島や八重山諸島に近く、日本の領有に反発する漁民も多く、二〇一二年には、同港の大漁船団が尖閣周辺で抗議活動を行った。一部が親中活動家の支援を受けている可能性もある。

国安会は昨年末から、行政院(内閣)傘下の海巡署、漁業署、外務省との連絡体制を立ち上げ、特に漁業署には七隻の動向を二十四時間体制で監視するよう指示した。十二カイリの海域に近づいたら、国安会へ報告する一方、漁船に警告することを申し合わせた。

国安会の懸念通り今年三月初め、日台漁業委員会の交渉開始に合わせるかのように、数隻が尖閣諸島の十二カイリ内で入り数日にわたり漁を続けた。海巡署の巡視船が急行し、スピーカーで「安全操業」を呼び掛ける一方、船位位置監視システムを起動するよう命じた。

漁業署は後日、七隻の資料をまとめ、台湾の対日窓口機関である台湾日本関係協会に手渡したという。

 最近の日台関係は一時ほど和気あいあいでない。台湾外交筋によると、東京電力福島第一原発事故後から続く、福島など日本の五県産食品の輸入禁止がきっかけという。

 中国から外交攻勢に苦しむ蔡政権は、米国、日本との関係悪化は何としても避けたい。問題漁船七隻は、日台関係にひびを入れかねない。厳しい監視は当面続きそうだ。