南シナ海の領有権を巡り、中国の主張を一蹴したオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の判決。台湾が実効する太平島を、排他的経済水域(EEZ)を設けられる「島」はなく「岩」と認定したことに、民衆とともに蔡英文政権にも衝撃が広がった。


ニューサイト・「風伝媒」によると蔡英文政権は、事前のシミュレーションで、判決が太平島に言及せず、中国、台湾、フィリピンが領有権を争う黄岩島(スカロボー礁)に触れるだけとみていた。太平島を島とすら認めない判決に、李大維外相は「最悪だ」とうめいた。


蔡総統は、判決が出た712日、「絶対に受け入れられない」との声明を発表した。中国同様、判決を全面拒否する強硬な内容で、米国も不快感を示したが、国内の民族主義への配慮を最優先にした。実際、与野党の立法委員(国会議員)8人が720日、軍用機で同島に上陸し、台湾の主権をアピールしている。


ただ、与党・民主進歩党(民進党)と政府は、歴代政権が主張してきた南シナ海全域の領有を示す「U字線」(中国の「九段線」と同じ)に今後は一切触れず、太平島など実効支配する島・岩礁の主権の主張にとどめることを決めたとされる。


中国国務院(内閣)台湾事務弁公室はこのほど、「U字線」の堅持とともに、南シナ海での共闘を蔡政権に求めたが、対中関係を所管する行政院(内閣)大陸委員会の張小月主任委員は即座に拒否した。米国、日本、東南アジアとの良好な関係を重視するためとみられる。