台湾では「月光族から馬総統への手紙」という「阿嘉」を名乗る男のネットへの書き込みが共感を呼んでいる。阿嘉は南部の嘉義県出身で台北に暮らす。1日10時間も働くが、銀行預金は勤続年数に反比例して減少。月給3万台湾元(約8万3,000円)の支出の内訳を列挙した上で、「どんなに節約しても赤字になる。一体どうすればいいのか」と馬総統に問いかけている。 書き込みは約2カ月前だが、今だにネット上での転載が続き、マスメディアも広く取り上げた。月光族は、1カ月の給料を使い切る人々の意味だそうだ。 阿嘉は1日1箱のタバコを吸い、テイクアウトのコーヒーを飲み、1日3度も外食。アイフォーン(iPhone)を使い、カラオケを楽しみ、彼女にはプレゼントを欠かさない。郷里の両親にお年玉も贈ると、月額平均で4万元を超えるという。ネット上では「コーヒーはインスタントに変えよ」「服に1カ月1,500元は使いすぎ」などの批判も出た。でも今どきの若者の普通の暮らしであり、同情論の方が多い。 阿嘉は、映画「海角7号」の主人公の名。ミュージシャンを目指すも夢破れ、「台北なんてくそ食らえ」と叫ぶ冒頭のシーンが印象的だ。 台湾は貧富格差が拡大し、生活水準が二極化する「M型化」が進んでいる。阿嘉の書き込みが共感を呼ぶのは、貧しさよりも希望のなさではないか。今はそれなりの消費生活を楽しんでいるが、これから貧しくなる予感。あるいは未来が今よりよくはならないだろうというあきらめ。共有しているのは失望感ではないかと思う。