友人の計らいで、李登輝元総統が主催する青年向けセミナー「李登輝学校」を傍聴。元総統の話を聞いた。91歳のご高齢には見えぬお元気さだった。本日はセミナーの終了日で、出席者の学生約30人を前に2時間にわたり講演された。 なお李元総統は公金横領の罪で起訴され、6月22日に初公判に出廷予定だったが、狭心症を理由に出廷を見合わせた。健康状態が懸念されていた。 以下、発言と印象に残ったことをつらつらと。李元総統は、興が乗ると北京語から台湾語に切り替わり、私は分からなくなった。 ●「自分がどこから来て、何をし、どこに行くのかを考えよ」「自己を見つめ、自己の中に他人を見て、自我を捨て去る」「自分の中の『聖』に気付こう。不変のものに気付こう」「たましいはある」など、かねてからの持論を述べられた。「たましい」の実在のところでは、レイテ海戦で戦死した兄君のたましいが帰還された時のことを語った。 ●キリスト教に出会い、神がついているいると思えたから、12年間総統が務まった。ストレスや緊張から救われた。 ●演台の上に1冊本を置き、それを見ながら話をされたが、ふとみると日本語の本。元総統は日本語で思考しているようだ。 ●尖閣諸島については「日本のもの。尖閣諸島(元総統は釣魚島とは言わない)周辺で、台湾と日本の間に漁業を巡る争いはあったが、領土紛争はもともとない」 ●「日本は明治維新の際、東西の文化を受け入れて融合した。だから、第2次大戦の敗戦の後も、あっという間に復興した」 ●「台湾経済がなぜ周囲の東アジア諸国より不振か」との質問には、俄然熱を帯びた答え。1980年代の状況から説き起こすので、話は2001年ぐらいで終わってしまったが、為替の問題に真剣に取り組まなかったこと、台湾企業の中国流出を許したことが大きいといわれた。土地など台湾内部の資源をぎりぎりまで使い切る努力を怠ったことを憂い、台湾に残ったはTSMCぐらいだと嘆く。 ●たましいの普遍性、内なる聖などの発言は願望であり、確信ではないような気がした。これに対し、政治の話題には熱がこもり、信念が感じられた。あくまで政治家。 ●きれいな女子学生が近づくと、少しうれしそう。90歳過ぎても男は男か。 ●秘書、ボディガードを多数引きつれ、結構物々しい。元国家元首なので警察の警備もつく。 ●威風堂々、風格を感じた。握手をしてもらったが、手は分厚く、冷たかった。