18年前の3月20日に東京で起きた地下鉄サリン事件。事件解決に、日本と縁の深い台湾人化学者が決定的な役割を果たしていたと遅まきながら知った。米コロラド州立大の杜祖健名誉教授。毒性学の世界的権威で、日本警察をサリン製造場所の特定に導いた。
台湾では父の杜聡明氏が、京都帝大を出て台湾人初の医学博士として著名。高雄医学大を創設するなど台湾の医学の発展に貢献した。長女の杜淑純氏も台北帝大初の台湾人女学生。三男の祖健氏は台湾大卒業後、渡米し大学教授になった。
杜氏は日本時代に台北一中(後の建国中学)で学び日本語が堪能。事件をきっかけに改めて日本との関係を深め、09年には旭日中綬章を贈られた。父ともども天皇から叙勲されたことを誇りにしているという。悲惨な事件を回顧する中、長くて深い日台関係を思いがけず垣間見た。(井)(NNAテイクオフ 3月26日)