2020年6月22日難 反中国デモが燃え盛る香港から、台湾への「政治難民」が急増している。人権NGOの台湾人権促進会によると、新型コロナウイルス感染防止対策のため、台湾当局が香港からの入国を規制する前、台湾に逃げ込んだ香港反政府デモの参加者が二百人を超えた。うち八十数人が「政治上の理由で保護が必要な人士」と認定され台湾居住を認められた。(写真は風伝媒のキャプチャー)

 何しろレンガ一個を投げただけで懲役刑になりかねない。さらに多くの香港人が、政治難民の認定を受けようと審査を待っているが、中国が政治難民を装って、第五列(スパイ)の浸透を図るのは確実だ。台湾の情報機関は、身元審査を強化するため、政府の認定作業チームに人員を配置した。

 中国が、台湾への浸透工作を一段と強化していることは明らかだ。台湾内政部移民署によると、去年、台湾入国を申請して拒否された中国本土の市民は三七四二人と、前年比七二%も増えた。中国共産党や軍の関係者と判明したためだが、台湾で親中国派の育成や、世論工作などさまざまな活動を企んでいたとみられる。

 台湾の情報機関、国家安全局の推定では、台湾にいる中国のスパイは約五千人に上る。主な活動対象は台湾軍だが、政府や企業なにも入り込んでいるのは間違いない。

 浸透工作の中身も多様化しており、今年三月には、台湾法務部が、新型コロナウイルスに関するフェイク情報を調査したところ、中国軍サイバー部隊が台湾のドメイン十三個を買収していたことが判明。フェイスブックなどSNSを通じて、大量のフェイク情報を流していたことが明らかになった。

 実のところ現在の台湾で、政治難民の受け入れ制度が未整備で、現在は各機関が連絡し合い、各地でばらばらに審査が行われている。政治難民のけ入れには、「身元」と「事実」の厳格な調査が特に必要で、専門窓口や調査システムの確立が急務だ

 台湾は日本や韓国の事例を参考にしているが、国家安全局の担当者は、日本で『出入国管理及び難民認定法』の制定後、毎年約二千人が申請しているのに、認定は十人に届かない現実を重くみている。

 同局などによれば、現状では「政治難民」が、中国にとり浸透工作の格好の破れ窓になりかねない。しかし、中国が香港版国家安全法の制定を決めたことで、香港の反中国デモがまもなく激化することは必至。台湾の政治難民受け入れの制度づくりは、時間との戦いとなっている。