22021年4月1日海 中国は二月初め、海上警察の海警局に、外国船への武器使用を認める「海警法」を施行したことは、日本だけでなく台湾を緊張させている。台湾はこれまでも平時でも有事でもない「グレーンゾーン事態」に対処するため、海保に当たる「行政院海岸巡防署(海巡署)」の「第二海軍」化を進めてきた。中国の「海警法」施行で、世論の追い風が吹いており、艦船の大型化や重装備化に、さらに拍車が掛かりそうだ。(写真は、聯合報のサイト画面)

 台湾の海巡署は、中国海警局船を相手とする領海警備に加えて、排他的経済水域(EEZ)や領海を侵犯して悪事を働く、様々な中国船の取り締まりに手を焼いている。

 北朝鮮に石油を運ぶ中国の密輸船のほか、船体を鋳鉄で覆われ「凶器」と呼ばれる中国の漁船が、台湾の領海内で違法操業を繰り返している。漁船に体当たりされると、巡視船が沈没しかねない。

 最近では、台湾が実効支配する、中国本土沖十キロの離島「馬祖列島」周辺で、領海からごっそりと砂を盗む、中国の砂採取船という新たな脅威が加わった。臨検の対象だが、台湾側の巡視船は放水銃ぐらいの軽武装のため、完全にナメられている。

 さらに中国は最近、漁業会社の名目で「海上民兵」部隊を多数編成し、南シナ海などで活動させている。台湾が実効支配する南シナ海の「東沙諸島」に上陸する恐れが出てきた。現地にいる台湾海兵隊は「漁民」を攻撃できないが、海巡署の警察力では対抗不能だ。

 いわば台湾周辺は「グレーゾーン事態」の宝庫で、海巡署の強化が不可避となっている。
 蔡英文政権は二〇一六年の発足後、海巡署の増強を着々と進めてきた。一六年には、海軍の李仲威予備役中将が海巡署の長官に就任。李中将は一九年から、同署を管轄する行政院海洋委員会主任に昇格した。後任の長官にも、海軍の周美伍予備役中将が就き、軍主導の機関となった。

 今年に入り、国産の多連装ロケット砲を装備した六百トンの大型双胴巡視船二隻が相次ぎ進水した。戦時には、対艦ミサイルを搭載し戦闘に加わる準軍艦で、さらに二十二隻建造される計画だ。このほか百トン以上の巡視船には、機雷の敷設装置の設置が可能になった。海巡署は、海軍の支援部隊の役割も負いつつある。

 さらに、臨検などで外国船舶に乗り込む特殊部隊「海巡特勤隊」(CGA.STF)は二〇年に装備を一新。防弾ジャケットや自動小銃、拳銃などで米国の最新式を採用。狭い船内での作戦に適した装備で、砂採取船や漁船摘発への投入さ想定されている。東沙諸島への派遣も検討されている。

 海巡署の重武装化は、一部の愛国的な国民を興奮させている。しかし、海巡署の重火器使用は法的にはグレーで、隊員の使用経験もなく、実際の警備活動では使えないとの見方もある。また、巨砲大艦よりも、海巡署航空隊の充実を優先するべきと現実的な声も上がっている。

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