一時は天才ともてはやされたオードリー・タン(唐鳳)デジタル開発相は、能力に疑問符がつき初め、強い逆風にさらされている。台湾で一月末、陳建仁・行政院長(首相)の新内閣が発足し、タン氏は同相に再任されたが、最大野党国民党は二月初め、陳院長のほかタン氏と王美花経済相の二閣僚が「不適任」だとして辞任を求めた。
タン・テジタル開発相は二〇一六年、三十五歳の台湾史上最年少で閣僚に就任。米外交専門誌には一九年、世界の思想家百人に選ばれるなど頭脳の優秀さが注目された。ただ、デジタル担当相としの実績は極めて乏しいとの指摘が多い。
国民党によると、タン氏が率いるデジタル開発省は、発足以来二〇〇億台湾元(約三九〇〇億円)の予算を使ったが、同省が開発したウェブサイトで、現在も使われているものはほぼゼロ。鳴り物入りで登場した「新型コロナウイルスワクチン予約サイト」や、消費刺激策の振興券「三倍券」の登録用サイトも、結局は開発を外部に丸投げしていたことが発覚し、天才タン氏の存在意義が問われた。
さらに、二二年十二月、台湾国民約二三〇〇万人のほぼ全員分の戸籍資料がハッカーに奪われたことが発覚した。しかし、以降、八十日以たってもタン氏とデジタル開発相が真相究明や対策に積極的に関わった形跡がなく、タン氏は「各省が個人情報の管理をしっかりやるべきだ」と述べるにとどまり周囲をがっかりさせた。
国民党の陳暉・副報道責任者は「このような閣僚は、姿勢と職務能力のどちらからみても不適任だ」と強く批判した。
台湾では二月十日、国立のサイバーセキリュティー専門研究機関「国家資通安全院」が発足し、タン氏と蔡英文総統が開所式に出席した。蔡総統はあいさつで「サイバーセキュリティーはすなわち国家の安全だ」と述べ、最強のサイバーセキュリティー態勢を構築すると強調した。
ただ、戸籍情報の漏洩問題に進展がない中、蔡総統がサイバーセキュリティー」の重要性を強調したことに強く反発。国民党は「多額の予算を使いながら無策だ」として、デジタル開発省とタン氏を改めて批判した。
◇出典
https://www.upmedia.mg/news_info.php?Type=1&SerialNo=164926
https://www.storm.mg/article/4659374