天孫降臨 時事通信社の北京支局長、上海支局長などを務めた、信太謙三(しだ・けんぞう)さんが初めての小説を出版しました。「天孫降臨 日本縄文書紀」(花伝社・価格1500円+税)です。
 
 IT技術の発展、インターネットの普及、人とモノの流れの拡大などによって、地球規模での国際化が急速に進んでいます。もちろん、日本も例外でありません。しかし、この大きな潮流に逆らうように、特定の民族などに対するヘイトスピーチも起きています。
 
 しかし、歴史を振り返ってみれば、古代日本には多様性がありました。中国大陸や朝鮮半島、東南アジアやロシア極東地域、南太平洋などから、さまざまな人たちが日本列島に移り住み、国家としての基礎を作り上げていきました。
 
 本著は日本で稲作が始まったとされる今から2300年前の縄文晩期を舞台にしたエンタメ小説です。
 
日本列島の先住民である倭人の娘と中国大陸の戦乱から逃れた華人の息子との間に生まれた巫女ポポが、朝鮮渡来人の血も引く甥のタケと共に、チクシ(筑紫)支配を狙う半島のカラ国や稲作のために倭人から土地を奪おうとする半島からの渡来人と戦いながら、日本で初めての国を造り上げていくという物語です。
 
 古代船での大航海あり、脱獄あり、大海戦あり。男女の悲しい恋もあって、決して読者を飽きさせません。フィクションと言いながら、当時の日本の国際化の状況を、綿密な歴史研究に基づき、まるで映画のようにみせてくれます。元記者の習性として「ほう」と読者を驚かせるような、多くの人が知らない事実を随所に盛り込んだそうです。
 
信太さん顔写真 著者(写真)は時事通信社で北京と上海の支局長を務めたジャーナリストで、東洋大学で10年間教鞭をとりました。信太さんは「日本という国がいったいどういう国で、日本人がどういう民族なのか、この物語を楽しみつつ、考えてもらえばありがたい」と語っています。






北京特派員 (平凡社新書)
信太 謙三
平凡社
1999-07

巨竜のかたち―甦る大中華の遺伝子
信太 謙三
時事通信出版局
2008-05