英誌エコノミストは1日、台湾海峡情勢が軍事的および「グレーゾーン」戦術を通じて中国からの圧力を受け続ける一方、米国の抑止力が徐々に失われていると指摘した。記事は、トランプ米大統領が中国との核戦争を避けるため、台湾を徐々に中国の勢力圏に組み込ませる道を選ぶ可能性があり、事実上の「台湾放棄」に等しい合意を習近平氏と交わす可能性があると指摘。アジア太平洋の戦略バランスと民主主義の防衛線を揺るがしかねないと警告している。北米の中国語メディア、世界新聞網が伝えた。

 台湾では過去3回の総統選で独立志向の民進党が勝利しており、台海の緊張は年々高まっている。2010年以降、TSMC(台湾積体電路製造)が先端半導体製造で台頭し、台湾の経済的重要性も上昇した。同時に、中国の国防予算はドル建てで3倍に増加し、アジアにおける米国の軍事優位は大きく損なわれた。

 トランプ政権は中国への関税を145%にまで引き上げて対中強硬姿勢を示したが、これ以上打つ手はなく、中国に持久戦を許す展開となった。米国は台湾や日韓豪にも関税圧力をかけ同盟関係を損ねている。

 中国は台湾包囲を想定した「聯合利剣」演習に加え、台湾周辺海域での臨時検疫や通関検査、海警局による巡視など、戦争には至らないが圧力をかける「グレーゾーン戦術」を強化している。また、2023年以降、中国は外交攻勢を強め、すでに世界の70カ国が「平和的統一を促す努力」への支持を表明し、中国の対台湾戦略に外交的な正当性を与えている。

 頼清徳総統と野党が対立する中、台湾政治は機能不全に陥り、防衛強化や社会的結束が困難となっている。中国の浸透に対する強硬な対応も社会の分断を助長している。

 米国が台湾防衛への姿勢を曖昧にすれば、台湾は自衛の意志を失い、戦火を交えずに中国の勢力圏に組み込まれる恐れがある。この結果、台湾の民主主義や世界の半導体供給体制が脅かされ、米主導のアジア秩序は再編を迫られる。習近平氏は「時機到来」と見て、行動を加速する可能性がある。


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