トランプ氏に「台湾独立反対」と言わせたい習近平氏 米国は立場不変と今のところ強調

安全保障

習近平が狙う「反対台独」への言質

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、中国の習近平国家主席が、来年の経済協定を急ぐトランプ米大統領に圧力をかけ、「台湾独立に反対する」と明確に表明させようとしていると報じた。

習近平にとって、バイデン政権下で使われた「台湾独立を支持しない(不支持)」という表現ではもはや不十分だ。もし「反対」と明言させることができれば、米国の中立的立場を崩し、北京と同じ立場に引き込むことになる。これは単なる言葉の違いではなく、台湾の主権を否定する強いシグナルであり、台海情勢を大きく揺るがしかねない。


中米接触の舞台と経済協定の思惑

習近平は2012年の就任以来、「中華民族の偉大な復興」の核心として台湾統一を掲げてきた。彼は、トランプが経済協定を政治的成果として必要としていると見ている。そのため、経済交渉を突破口に米国の政策転換を迫る構えだ。

両首脳は、韓国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で会談する予定とされる。さらに2026年には相互訪問の可能性も浮上している。しかしホワイトハウス関係者は「計画はまだ初期段階」と説明し、実現は中国が貿易問題やフェンタニル原料流入抑制にどこまで協力するかにかかっている。


中国外交部「台湾は核心利益」

29日の中国外交部会見で郭嘉昆報道官は、「台湾問題は中国の核心利益の中の核心であり、中米関係の越えてはならないレッドラインだ」と強調した。さらに「一つの中国」原則は国際社会の普遍的な合意であり、中米関係の政治基盤だと主張。「この原則を堅持する以上、台湾独立に反対するのは当然だ」と述べた。

中国側はこれまでも台湾独立を強くけん制している。例えば、「台湾独立は戦争」 中国が総統選与党候補をけん制や、中国国防相「台湾独立は自滅」 民進党政権脅すなど、発言は一貫して強硬姿勢だ。


米国「政策は不変」 最大の脅威は中国

一方、米国務省は30日、「台湾関係法、米中三つの共同コミュニケ、台湾への六つの保証に基づき、一つの中国政策を維持している」と表明。「米国は台湾海峡の平和と安定に尽力しており、いかなる一方による一方的な現状変更にも反対する。中国の行動こそが最大の脅威だ」と強調した。

米側関係者は、北京の「反対台独」という言説を受け入れないことが中国抑止の要だと指摘する。受け入れれば、中国がロシアのウクライナ侵攻のように政治的口実を利用しかねないからだ。


軍事準備進む中国 渡輪とロシア技術

米軍事情報報告によると、中国は民間フェリーを軍事転用し、台湾侵攻に備えている。五眼同盟は2022年の演習で約30隻を確認し、戦略国際問題研究所(CSIS)は来年末までに70隻超の大型フェリーが建造されると指摘する。

さらに、英王立合同軍事研究所の分析では、ロシアが高高度空挺作戦のノウハウや水陸両用突撃車など特殊技術を中国に提供しているとされる。これらは台湾有事への備えに直結する可能性がある。


国際社会の分析と警戒

米シンクタンク・スティムソンセンターの孫韻氏は「米国の台湾政策が一夜にして変わることはない」と分析。ただし、中国は立場を粘り強く繰り返すことで、台湾が米国の安全保障に抱く信頼を徐々に削ぐ戦略を取っていると警鐘を鳴らしている。

台湾問題をめぐる中国の圧力は今後も続く見通しだ。すでに中国国台弁は「台湾独立派懲罰ページ」を公開しており、独立派を狙い撃ちにする動きも表面化している。


まとめ:言葉の選択が台海の安定を左右

習近平が狙う「台湾独立反対」の明言は、米中間の微妙な言葉の違いを超え、国際政治の大きな転換点となりうる。米国は現状維持を掲げ、中国は統一の圧力を強める。台海の安定は、両大国の一言一句に左右される状況が続いている。

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