台湾の頼清徳総統は17日、国家档案館の開館式で取材に応じ、「中国が日本に複合的な攻撃を仕掛け、インド太平洋地域の平和と安定を深刻に揺るがしている」と述べ、強い懸念を示した。中国は大国として自制を示し、地域の平和を乱すトラブルメーカーとなるべきではなく、国際秩序を支える原則に基づく軌道に戻る必要があると訴えた。総統は国際社会にも継続的な関心を求め、中国の行動が地域情勢に過度な緊張を生むと警告した。
日中緊張の背景:高市首相発言への中国の過剰反応
今回の緊張の発端は、日本の高市早苗首相が国会で、台湾有事は日本の集団的自衛権行使につながる「存亡危機事態」になり得ると明言したことだった。これに対し中国側は激しく反発し、中国外交官が挑発的な発言を行ったほか、日本への渡航自粛を二度にわたり呼びかけた。
さらに釣魚台(尖閣諸島)周辺での海警巡航、黄海中部での実弾射撃計画を発表するなど、中国は軍事・外交の両面で圧力を強めている。
これら一連の行動は、台湾政府が「複合式攻撃」と表現したように、外交圧力、世論操作、軍事的示威が組み合わされたもので、日中関係のみならず台湾の安全保障環境にも影響を与えつつある。
台湾政治への波紋:野党の反応と米国の評価
台湾の野党が高市首相を「軽率」と批判したことについて、頼総統は米国の駐日大使がすでに高市首相の発言を評価しており、日米関係の強化や地域安定に寄与すると述べている点を指摘した。そのうえで「台湾の政治家は、日本の国内政治を尊重し、地域の安全保障環境を踏まえた慎重な姿勢が必要だ」と語り、台湾内政が国際情勢の理解不足に左右されることを警戒した。
日本の安全保障政策の文脈:中国の反応は適切か
外交関係者によれば、日本の安全保障戦略は近年の地域情勢の変化を踏まえて徐々に形成されてきたもので、高市首相の答弁はその延長線上に位置するとされる。つまり、高市首相の発言は日本政府の既存方針を逸脱したものではなく、国際社会が理解してきた日本の安全保障姿勢と整合的である。
にもかかわらず、中国が外交的威圧と軍事的示威を組み合わせた過剰な反応を示すことは、台湾政府が警告するように、地域の誤算と緊張の連鎖を引き起こすリスクを高める。インド太平洋地域における安全保障環境はすでに複雑さを増しており、中国の行動はその不確実性をさらに押し上げる可能性がある。

