台湾当局、中国SNS「小紅書」を1年間遮断 1706件の詐欺関与と調査拒否で 若者に波紋も

政治

台湾政府、小紅書を1年間遮断 詐欺1706件に非協力でISPに停止命令

台湾の内政省は4日、中国系SNS「小紅書(RED)」が過去2年間で1706件の詐欺事件に関与したにもかかわらず、当局の照会に応じなかったとして、台湾国内のインターネット接続事業者(ISP)に対し、ドメインのDNS解析停止とアクセス遮断を命じた。期間は暫定で1年間。通信事業者が実際の遮断を担う。

行政院は、小紅書が改善要求にも応じず、台湾法の管轄外で資料提出が得られないため、捜査に重大な支障が生じていると説明した。総統府の郭雅慧報道官は、小紅書は詐欺追跡に協力せず、一部の情報セキュリティ基準にも不適合だと述べ、内政省の判断を支持した。劉世芳内相は「台湾に法定代理人を置かず、連絡も取れない。これでは打詐法規を順守しているとは言えない」と強い姿勢を示した。

行政院の李慧芝報道官は、昨年成立した「詐欺犯罪危害防制条例」により、主管機関が必要時にISPへ接続制限を命じる権限を持つと説明。国民の財産保護を最優先に措置を支持した。


若者・緑営支持層にも広がる戸惑い 「説明不足」「政治的連想を招く」との声

小紅書は化粧品、旅行、ファッションなど生活情報を扱うアプリとして台湾で人気が高く、利用者は300万人を超える。突然の封鎖発表に、若者の間で戸惑いが広がり、アプリ内ではVPNによる迂回利用の方法を探す投稿が急増した。

親民進党(緑営)のネット利用者の中にも、「国安上の必要性は理解できるが、政府の説明が不足していたため利用者が混乱した」との声が出た。ある若い支持者は「多くの人は生活情報を見るだけで政治利用していない。まずメディアリテラシー教育を進め、非協力的なプラットフォームを明確に公表すべきだった」と述べ、社会的コミュニケーションの欠如が反発を招いたと指摘した。

台湾派のネット利用者は、「若者は制限されるほど逆に見たくなる」と述べ、現在の両岸緊張や地方選挙の局面での発表は、政治的連想を引き起こし逆効果になると警告した。

民進党関係者も、「若い世代の支持に一定の影響は避けられない」と認めつつ、ただちに大規模な票離れには直結しないと分析する。それでも、「政権イメージには確実に傷がついた」との見方が広がっている。


台北市長「反中のあまり共産党化」発言で応酬 中央と地方の対立鮮明に

行政院打詐中心の封鎖決定をめぐり、台北市の蔣万安市長は「反中のあまり、自らが共産党のようになっている」と批判。これに対し内政省の劉世芳部長は、「台湾には共産党は存在しない。すべては打詐条例に基づく処理だ」と反論した。さらに劉は、「小紅書の扱いは、家に入った泥棒に『行動の自由だから好きに盗んでいい』と言うようなものだ」と比喩し、非協力姿勢が本質的問題だと強調した。

一方、台北市政府は劉の発言を「事実を歪曲している」と反撃し、デジタル発展部(数発部)が示す詐欺の主要流入経路に小紅書は含まれていないと指摘。「中央の封鎖措置は本当に対症療法なのか、それとも政治的操作なのか」と疑問を呈した。


中国側は「デジタル帰郷」を強調 両岸情報空間の新たな争点に

中国の官製メディア・環球網は、「台湾の若者はむしろ小紅書遮断で祖籍地への『デジタル帰郷』を加速している」と論じた。台湾利用者がVPNでIPを祖籍地に設定し、関連投稿を閲覧することで「文化的帰属が強まる」と主張する。

こうした論調は、台湾の遮断措置が単なるネット規制を超え、両岸の文化・情報空間をめぐる争点へと発展していることを示している。


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