頼政権が妨害? 蒋万安市長、9月「台北・上海両市フォーラム」延期を発表

政治

台北市と上海市の交流事業「台北・上海両市フォーラム」が延期となった。2010年に始まり、政権交代や新型コロナ禍を経ても継続してきた唯一の両岸公式交流プラットフォームだが、今回初めて中止に追い込まれた。背景には、頼清徳政権による技術的な妨害があるとされる。

蒋万安市長の訪中計画と延期決定

台北市政府は当初、9月25日から27日にかけて蒋万安市長が代表団を率いて上海を訪問する予定で、11日に移民署へ正式申請を行った。しかし21日朝、台北市政府は「技術的な審査や調整にさらに時間を要する」として、9月中の開催を見送ると発表した。

市政府は声明で「台北・上海両市フォーラムは両岸で唯一継続している公式交流プラットフォームであり、高い象徴的意義を持つ」と指摘。そのうえで、協力覚書(MOU)の内容や分科会の議題などについて、形式だけでなく実質的な成果を伴うよう十分に準備する必要があると説明した。「早く開催するよりも、より良い形で実施することが重要だ」との方針を示した。

大陸委員会の4つの注意事項

市府の公式説明の背後には、頼政権の警戒感がある。大陸委員会は台北市政府に対し次の4点を通知していた。

  1. 交流は市政に限ること。
  2. 中央政府の権限に属する観光などの議題を避けること。
  3. 中国共産党が主催する「三つの80周年」(抗日戦争勝利、国連創設、台湾光復)に関連する行事に参加しないこと。
  4. 新たに中国側高官との会談を設ける場合は事前申請すること。

これらの条件を付けたうえで最終的に参加が認められるとの見方もあったが、結果的にフォーラムは延期された。

妨害の対象となったMOU

頼政権は承認を先延ばしにするだけでなく、今回上海と締結予定だった「下水処理」と「職業教育」に関する2件のMOUについても、細部の修正を繰り返し求めた。いずれも政治的に敏感な分野ではないが、政権は「蒋氏の訪中は望ましくない」との姿勢を示したとみられる。

「三つの80周年」への警戒

背景にあるのは「三つの80周年」だ。習近平総書記は抗日勝利80周年の閲兵式で台湾への直接言及を避けたものの、9月23日からの国連総会(中国からは李強首相が出席予定)や10月25日の台湾光復節に向け、台湾当局は強い警戒感を持っている。頼政権が3月に打ち出した「国安17条」にも「中国による統戦浸透への警戒」が盛り込まれており、この方針が今回の対応に直結している。

市政府の立場と今後の展望

台北市政府は「両岸関係が厳しい時こそ、交流は安定的かつ慎重に進める必要がある」と強調し、「外部からの時間的圧力で基準を下げることなく、市民の利益と都市の長期的発展を最優先にする」と表明した。そのうえで「理解を深め、信頼を積み重ね、市民にとって具体的かつ有意義な成果をもたらすフォーラムを実現したい」としている。

最後に市政府は「台北・上海両市フォーラムの精神は『両市が良ければ両岸も良い』にある」と述べ、「対等・尊厳・善意・互恵」の原則を堅持し、今後も上海との交流を推進する考えを示した。開催時期は「条件が整い次第、改めて発表する」とされ、国連総会と台湾光復節を過ぎた後に再び実現の可能性がある。

関連する過去の動き

両岸関係をめぐっては、中国軍の演習中に「上海台北都市フォーラム」が開かれた経緯もある(参考:中国軍演習の中、「上海台北都市フォーラム」開催へ)。また、過去には蒋万安市長が「対話拡大と対立緩和」を呼びかけた事例もあり(台北市長、中台の「対話拡大と対立緩和」呼びかけ)、都市交流が緊張緩和の一助となりうる可能性が注目されてきた。

出典

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