台湾独立への強硬姿勢と台湾側の反応
中国の習近平氏は9月30日夜、北京の人民大会堂で開かれた中華人民共和国成立76周年記念招待会で演説し、「両岸の交流と協力を深化させ、台湾独立分裂行為と外部勢力の干渉に断固反対し、国家主権と領土の完全を守る」と強調した。特に「外部勢力の干渉」という表現は昨年の演説には見られなかった新要素で、米国を念頭に置いたものとみられる。一方、昨年頻繁に用いられた「祖国完全統一」への直接的言及はなかった。
台湾の大陸委員会(陸委会)は翌10月1日、書面で「中共は従来の対台政策を繰り返したにすぎず、新味はない」と反発。「政府の両岸政策は一貫しており、台湾海峡の現状維持に努め、国家主権と民主自由を断固守る」との立場を示した。台湾側は、習近平氏の発言を従来の方針の繰り返しと位置づけ、政策転換はないとの認識を強調した。
外交部、国連総会2758号決議を再確認
習近平氏の演説と同じタイミングで、中国外交部は国連総会第2758号決議に関する立場文書を発表した。1971年に採択された同決議により、「台湾を含む中国代表権の問題は政治・法律・手続きの面で完全に解決された」と強調。米国などが台湾を国際場裏に参加させようとする動きに反発し、対台政策の正当性を主張する狙いが示された。
中華民族の復興と「十五五」計画
習近平氏はまた、中華民族の偉大な復興を「古来例のない偉大な事業」と強調。「憧れと挑戦はいずれも、時間を惜しんで奮闘する精神をかき立てる」と述べ、改革深化や高品質発展、民生改善の成果を列挙した。
さらに、来月には中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)が開かれ、「第15次五カ年計画(十五五規画)」が検討される予定であると説明。「新時代における党の中心任務に沿って、社会主義現代化の実現に向け決定的な進展を確保する」と語った。
香港・マカオ政策と一国二制度
習近平氏は「一国二制度」方針を揺るぎなく貫徹すると強調し、香港とマカオが「国家の発展大局により良く溶け込み、経済を発展させ、民生を改善することを支持する」と発言。香港・マカオに対して経済成長と社会安定を後押しする姿勢を鮮明にした。
国際的な文脈と反応
習近平氏は演説の中で、中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年の記念行事を振り返り、「民族精神を鼓舞し、愛国の情熱をかき立てた」と総括。9月初めの「九三閲兵」では中国、ロシア、北朝鮮の首脳が会場に集まり、西側諸国で「専制同盟」に対する懸念も広がった。
国慶節当日、中国国営メディアや党機関紙は祝賀の投稿を相次いで発信。台湾出身の芸能人もこれに呼応した。一方、米国務省はルビオ国務長官名義で「中国人民の健康、幸福、繁栄、平和」を願う声明を出すなど、国際社会からは多様な反応が示された。
まとめ
習近平氏の今回の演説は、台湾独立反対と外部勢力排除を前面に掲げたものの、台湾側は「新味なし」と一蹴。外交部の立場文書とあわせ、米国などの対台姿勢を強くけん制する狙いが明らかになった。香港・マカオ政策や「十五五計画」、中華民族の復興といった国内課題と並行し、台湾海峡をめぐる緊張は改めて浮き彫りとなった。
出典
- 德国之声中文网「习近平重申“反台独” 北京发布2758决议立场文件」
https://www.dw.com/zh/%E4%B9%A0%E8%BF%91%E5%B9%B3%E9%87%8D%E7%94%B3%E5%8F%8D%E5%8F%B0%E7%8B%AC-%E5%8C%97%E4%BA%AC%E5%8F%91%E5%B8%832758%E5%86%B3%E8%AE%AE%E7%AB%8B%E5%9C%BA%E6%96%87%E4%BB%B6/a-74194372 - 中央社「習近平稱反台獨與外部勢力干涉 陸委會:無新意」
https://www.cna.com.tw/news/acn/202510010163.aspx - 中央社「北京證監局:標普中國涉違規 未按規定訊息披露」
https://www.cna.com.tw/news/acn/202510010119.aspx