退役した台湾陸軍特殊部隊の元将校が香港で失踪か 陸委会は拘束を否定 高まる中港渡航のリスクと背景

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台湾の退役陸軍特殊部隊員、香港で消息不明か 陸委会「拘束の事実なし」

台湾陸軍の特殊部隊である水陸両用偵察大隊(通称:海龍蛙兵)で、かつて規律担当の政戦官(大尉)を務めていた陳穎陞氏が、スイスからの帰国途中に香港で乗り継ぎをして以降、消息を絶っているとされる情報がSNSで拡散され、波紋を広げている。これに対し、台湾の対中政策を所管する大陸委員会(陸委会)は25日、香港当局への照会結果として「陳氏は香港におらず、拘束の事実もない」と回答した。

事端はSNSの「Threads」上の匿名投稿だった。陳氏は昨年、知人の誘いでスイスへ渡航。帰路の香港到着を最後に11か月間消息不明となり、家族が捜索願を出しているという。ネット上では、特殊部隊の元幹部という身分による政治的拘束を懸念する声のほか、宝石商が関与した詐欺被害を疑う見方も出ている。

陸委会は、2025年4月に警察を経由して家族から協力要請を受けていたと説明。同会の香港事務所が調査した結果、香港政府による留置などは確認されなかった。一部報道では、陳氏の足取りは依然としてスイスにあるとの情報もあり、SNSの伝聞と事実関係の乖離も指摘されている。

陸委会は今月2日、香港・マカオの旅行警戒レベルを「オレンジ(不必要な渡航の自粛)」に据え置き、注意を呼びかけた。2025年1月から10月の間に中国当局に留置・調査された台湾人は178人に上り、前年比で3倍超と急増している。


ネット上での拡散と経緯の不透明さ

事の発端は、陳氏の友人を名乗る匿名ユーザーによる「国境を越えた人探し」の投稿だ。投稿によれば、陳氏はインフルエンサーの誘いを受けてスイスへ向かい、昨年(2025年)の帰路、香港で乗り継ぎを報告したのを最後に連絡が途絶えたという。失踪期間は11か月に及ぶとされ、警察にはすでに行方不明者として届け出が出されている。

陳氏の軍校時代の同級生からは「退役後、音沙汰がないのは確かだ」との証言が出る一方で、一部では「誘ったとされるインフルエンサーが現在もSNSを更新し続けている」といった不自然な点や、宝石商との接触が噂されていることから、東南アジアなどの特殊詐欺グループに売り飛ばされた可能性を指摘する声も上がっている。

特に、元特殊部隊員という高い身体能力や規律を持つ人材が、甘い言葉で海外へ誘い出され、事件に巻き込まれるケースは、近年の組織犯罪の傾向としても注視されるべき点である。

陸委会による公式回答と事実関係の乖離

陸委会は25日の会見で、2025年4月に警察を通じて家族からの協力要請を受けていたことを明かした。同会の香港事務所が現地当局へ照会したところ、陳氏は現在香港におらず、当局に身柄を拘束されている事実もないことが判明した。

また、一部メディアの周辺取材によれば、陳氏は退役前に海龍部隊に直接所属していた事実はなく、機密保持の監視対象者でもなかったとの情報がある。さらに、陳氏の足取りは依然としてスイス国内にある可能性が示唆されており、SNS上の「香港で失踪した」という情報との間には事実関係の大きな乖離が見られる。

これは、SNS上の不確かな情報が、昨今の「中国・香港渡航への恐怖心」と結びつき、急速に拡散された典型的な事例と言えるだろう。

高まる渡航リスクと安全保障上の背景

本件を受け、ネット上では退役軍人という敏感な身分でありながら敵国への警戒心が欠如していたのではないかという批判や、中国・香港経由の乗り継ぎリスクを懸念する声が相次いでいる。

中国政府は近年、国家安全法や反スパイ法を強化しており、台湾人、特に軍や政府の背景を持つ人物に対する監視の目は厳しさを増している。入国時だけでなく、単なる過境(乗り継ぎ)であっても、当局による別室での取り調べや留置のリスクは低くない。

陸委会が発表した統計によれば、2025年1月から10月までの間に、中国へ渡航した台湾人が当局に留置・調査されたケースは178人に上り、前年同期比で3倍以上に急増している。これは、中台関係の冷え込みと中国側の法執行の厳格化が、一般市民の往来にまで直接的な影響を及ぼしている実態を浮き彫りにしている。

退役軍人、とりわけ特殊部隊や情報部門に関わった経歴を持つ者にとって、中庸な第三国経由であっても、中国の影響力が及ぶ地域を通過すること自体が、潜在的な安全保障上のリスクを孕む時代となっている。

[出典]

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