中国軍、H-6K戦略爆撃機で台湾周辺を威嚇 米中首脳会談前に示威的訓練実施

安全保障

中国軍、H-6K戦略爆撃機で台湾周辺に示威行動

 中国人民解放軍が台湾周辺空域で再び行動を起こした。中国中央テレビ(CCTV)は10月26日夜、東部戦区空軍の複数部隊が「実戦化訓練」を実施し、H-6K戦略爆撃機を含む航空機群が台湾島周辺の海空域で模擬対抗訓練を行ったと報じた。映像には爆弾投下シーンも含まれ、搭乗員が「雲上から台湾の海岸線が明瞭に確認できる」と発言している。

 H-6Kはソ連製Tu-16を基に開発された中国唯一の長距離戦略爆撃機で、**核兵器搭載能力を持ち、長距離巡航ミサイル(CJ-10A)**の発射も可能。中国空軍の核抑止力を象徴する存在であり、今回の訓練は軍事的デモンストレーションの色彩が濃い(出典:DW中文網)。


台湾光復80周年と重なる政治的タイミング

 訓練の時期は、台湾が日本の統治から離脱して80年を迎えた**「台湾光復記念日」**と重なる。中国全国人民代表大会常務委員会は10月25日を正式な国家記念日に制定し、北京の人民大会堂で記念大会を開催。中国人民政治協商会議(政協)主席の王滬寧は「平和統一後、台湾の経済、エネルギー、民生はより良くなる」と強調した(出典:聯合報)。

 台湾の行政院大陸委員会(陸委会)は「中国は軍事的威圧をやめ、民選政府と平等な対話を行うべきだ」と声明を出した。記念日に合わせた軍事行動は、「平和」を掲げる中国の姿勢との矛盾を露わにしている。


米国は台湾支持を明言、台湾国防部は冷静対応

 台湾国防部は27日朝の発表で、中国軍機4機を確認したのみで「異常な動きはない」と説明。米国務長官マルコ・ルビオは「台湾は米中首脳会談を懸念する必要はない」と述べ、台湾防衛への関与を改めて表明した(出典:TVBS新聞網)。

 米中両国の戦略的駆け引きが続くなか、中国は「法理闘争」「軍事示威」「世論戦」を同時展開しており、台湾周辺の安全保障環境は一層不安定化している。


頼清徳総統「平和は理想だが幻想ではない」

 台湾の頼清徳総統は26日、地元メディアの番組で「平和は理想だが幻想ではない。平和は実力の上に成り立つ」と語り、防衛力強化の方針を明言した。1949年の金門・古寧頭の戦いを引き合いに「この勝利が台湾の安定を守った」と述べ、中国の圧力に屈しない姿勢を示した。

 中国政府は頼氏を「分裂主義者」と非難し、対話を拒否しているが、台湾側は「未来は台湾人民が決める」との立場を堅持している。


背景分析:中国の「威圧外交」と核抑止戦略

 H-6Kの投入は単なる訓練ではなく、**「空からの核抑止力」**を誇示する政治的演出でもある。習近平政権は台湾光復80周年を国家イベント化し、「歴史的正統性」を強調する一方、内政面では経済減速や地方債務問題を抱える。こうした不安要因を外向きの軍事的威勢で覆い隠す狙いがあるとみられる。

 また、米国が日本・フィリピンと連携を強めるなか、中国は「米台接近」を抑止するため、台湾海峡での軍事活動を常態化させている。今回のH-6K訓練はその一環であり、**軍事圧力と政治宣伝を結合させた「威圧外交」**の典型例といえる。


[出典]

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