桃園空港での「潜入」動画撮影、入国禁止措置を嘲笑う不遜な言動
昨年、台北市の繁華街・西門町で五星紅旗を掲げ、「台湾は中国のものだ」といった親中発言を繰り返したことで、台湾内政部移民署から入国禁止措置を受けていた日本人インフルエンサーでホストの「百海アイラ」(Todomi Aira)が、最近、乗り継ぎのために台湾を短期間通過した。
今月12日、アイラは中国の動画共有サイト「Bilibili(ビリビリ)」のアカウント「艾拉很艾拉」に最新の動画を投稿し、「第三国への乗り継ぎ」という方法で、台湾の桃園国際空港への立ち入りに成功したことを明かした。彼は滞在時間を利用し、自身を通報した「青鳥(台湾の民主派層)」や台湾移民署に反撃するため、「台湾の空港で統一を応援(打call)する」と題した動画を「危険を冒して」撮影した。動画では、アイラはマスクと帽子を深く被り、同行者に自身の姿を撮影させている。空港内を移動しながら手にしたスマートフォンの画面には、「ここは台北空港、台湾省は中国に属する」という簡体字の文言と、中国の五星紅旗の画像が交互に表示されていた。
振り返れば昨年、アイラと同伴者の「日本狸猫」こと尾澤裕之の行動は、台湾と日本双方の社会から激しい批判を浴びた。アイラはこの騒動が発覚した後、すぐに東京・歌舞伎町のホストクラブ「CANDY」を解雇された。本人が開設していたTikTok(国際版)のアカウントにも、日本のネットユーザーから非難が殺到した。日本のアカウントが炎上したのを見たアイラは、活動拠点を中国のSNSに移し、日本人でありながら「中国を熱愛している」「武力統一を支持する」「台独分子(台湾独立派)を皆殺しにすることに同意する」といった激進的なキャラクターを演出することで、多くの中共信奉者(小粉紅)のフォロワーを獲得していた。
歌舞伎町から中国SNSへ、ホストの生存戦略と「小粉紅」ビジネスの産業構造
動画の中でアイラは、昨年の行為が通報され制裁を受ける羽目になったことに不満を漏らし、自分たちの行為が間違っていたとは微塵も思っていないと強調した。また、たとえ短時間であってもトランジットエリアの床に立てたことに胸が熱くなったと述べ、そこには「14億の同胞」の思いが詰まっていると主張した。「本当の平和が隔たりを乗り越え、堂々と『私たちは元から一つの家族だ』と言える日が来ることを祈る」と結んだ。
この行動の背景には、日本のホスト業界という既存の産業から排除された後の、徹底した「中国市場への依存」という企業戦略的な側面が見て取れる。一度日本国内で炎上し、物理的な店舗での就業が困難となった個人のインフルエンサーにとって、14億人という膨大な人口を抱える中国のネット市場は、たとえ偏った政治的キャラクターを演じてでも縋るべき巨大な経済圏となっている。Bilibiliや抖音(Douyin)といったプラットフォームでは、外国人による「親中」表現はコンテンツとして高い需要があり、それがそのまま広告収入や投げ銭、あるいは政治的なスポンサーシップへと繋がる収益構造が存在する。
アイラによる今回の桃園空港での動画撮影は、単なる政治的信念の吐露ではなく、自身のフォロワーである「小粉紅」たちに向けた、極めて計算された「実績作り」であるとも言える。台湾当局によって「入国禁止」とされている自分たちが、いかに「冒険」をして「祖国の尊厳」を台湾の地(たとえそれが制限区域内の乗り継ぎエリアであっても)で示したかという物語を提供することで、フォロワーとのエンゲージメントを高める狙いがある。
台湾当局の毅然とした対応と、国際社会に波及する「言論の境界線」
動画が公開されると、中国のネットユーザーからは「賢い」「真似したい」と称賛の声が上がり、解放軍が将来侵攻する際もアイラのような同胞は殺害されないといった過激なコメントも寄せられた。一方で、台湾のネットユーザーからは「旧正月にわざわざ笑い物を見に来た」「乗り継ぎと入国の違いを理解しろ」「安全な場所でしか大声を出せないのか」と猛反論が展開され、「第三国への乗り継ぎ」という主張そのものに矛盾があることも指摘されている。
時事評論家の鄧聿文氏は、こうした個人の言動がエスカレートする背景について、中国当局が台湾に対する強硬なトーンを一切崩していない国際情勢があると分析する。中国の傅聰国連大使は先日、台湾問題への介入は中国への侵略行為を構成すると主張し、王毅外相もまた、軍国主義の復活に強い警戒を呼びかけた。こうした国家レベルでの強硬姿勢が、アイラのような個人の「愛国ビジネス」を助長させ、より過激な言動へと走らせる土壌となっている可能性は高い。
台湾移民署は、アイラと尾澤裕之について「台湾の利益、公共安全、または公共秩序を害する恐れがある」として、昨年8月の西門町での事案に基づき、国外追放および入国禁止の処分を下していることを改めて強調した。なお、アイラは昨年の撮影当日に自ら日本へ帰国していたため、強制送還の執行は受けていなかった。しかし、今回のような乗り継ぎを利用した「法網」を潜り抜けるような挑発行為は、台湾の公共安全や国際的な秩序維持の観点から、今後より厳格な監視対象となることが予想される。
今回の事案は、個人のSNS活動が国家間のデリケートな政治問題と結びついた際、いかに容易に炎上し、かつ特定の勢力に利用されるかを示す典型的な例となった。日本、台湾、中国という三者の視線が交錯するなかで、一人の日本人ホストが演じる「親中」という役割が、今後どのような国際的な軋轢を生むのか、注視する必要がある。
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