韓国の電子入国申告書(E-Arrival Card)で、台湾が不適切に「中国(台湾)」と入力されている問題が、台湾の外交・経済関係に波紋を広げている。台湾政府は数カ月にわたり韓国側へ訂正を求めてきたが、表記は2025年12月時点でも修正されていない。これを受け、台湾外交部は対韓関係の全面的な見直しを示唆し、頼清徳総統も韓国に対し「台湾人民の意志を尊重すべきだ」と明確に訴えた。台湾・韓国関係の動向が注目される中、今回の問題は外交、経済、民間交流の広い領域に影響を及ぼしつつある。
■ 台湾外交部、韓国の不適切表記に強い抗議 「対韓関係を全面的に検討」
2025年12月9日、台湾外交部亜東太平洋司の劉昆豪副司長は定例記者会見で、韓国の電子入国申告書が台湾を「CHINA(TAIWAN)」と誤記している事実を改めて公表した。台湾側は今年2月以降、複数回にわたり韓国政府へ厳正な抗議を行ってきたが、韓国側はこれまでに明確な回答や訂正を示していないという。
外交部はこの状況を「台湾の国家的尊厳を損なう問題」と位置付け、韓国政府に対し早急な是正を要求。さらに外交部は、台湾・韓国関係について「全面的な再検討に入っている」と発表し、可能な対抗措置や外交上の対応策の準備に着手したことを明らかにした。
■ 台湾が抱える対韓貿易赤字 外交部「両国関係には不均衡」
外交部は今回の記者会見で、表記問題に加え、台湾が韓国に対して抱える大幅な貿易赤字にも言及した。台湾にとって韓国は重要な経済・技術パートナーである一方、貿易面では「大きな不均衡が存在する」というのが台湾側の認識だ。
台湾政府は従来、韓国との経済協力や半導体関連の技術交流を重視してきたが、今回の表記問題が長引けば、経済関係の見直しや貿易政策への影響が出る可能性もある。
■ 頼清徳総統「台湾人民の意志を尊重すべきだ」 韓国に対し異例の直接表明
2025年12月10日、頼清徳総統はアジア民主・人権賞の授与式前に記者団の取材に応じ、今回の表記問題について「台湾と韓国の民間交流、経済・貿易往来は密接で、両国は長年にわたり友好関係を育んできた」と述べた。
その上で総統は次のように強調した。
「韓国が台湾人民の意志を尊重し、地域の平和と繁栄のために協力を深めることを期待する」
総統がここまで直接的に韓国へ言及するのは異例であり、問題の深刻度を象徴している。
■ 台湾政府「韓国側は理解しているはず」 迅速な訂正を求める構え変わらず
外交部の劉昆豪副司長は、「韓国側は台湾の立場と訴えを十分に理解しているはずだ」と述べ、台湾として今後も正しい標記への訂正を求め続ける姿勢を示した。
さらに外交部は、韓国が訂正に応じない場合、台湾側が追加措置を取る可能性を否定していない。表記問題は単なる技術的ミスではなく、台湾の国際的地位や主権に関わる重大問題として扱っているためだ。
■ 今後の焦点:
- 韓国が誤表記を訂正するか
- 台湾外交部が示唆した「対韓関係再検討」がどの範囲に及ぶのか
- 貿易赤字や経済協力に影響が生じるか
- 頼清徳政権がどのレベルの外交措置を取るか
今回の一連の動きは、台韓関係だけでなく、東アジアの地域外交にも影響を与える可能性がある。表記問題は小さな事務的問題に見えるが、台湾の国際的地位や主権認識をめぐるセンシティブな問題であり、各国の注意を引きつけている。
台湾政府は今後も韓国に対し、正確な標記と対等な外交姿勢を求め続ける方針だ。

