「正義使命-2025」演習の時系列と軍事的意図
2025年12月29日朝、中国人民解放軍東部戦区は事前の予告なく、台湾周辺での大規模演習**「正義使命-2025」**の開始を宣言した。この演習は台湾海峡、および台湾島の北部、南西部、東方の各海空域を網羅する広範なものであった。
翌12月30日、演習は実弾射撃を伴う段階へと移行した。午前9時には陸軍部隊が台湾北部海域へ向けて長距離射撃を実施し、午後1時には海・空・ロケット軍が連携して南部海域への連合火力突撃を展開。特筆すべきは、発射された合計27発のロケット弾の着弾点が、台湾の24海里線(接続水域の境界線)付近にまで迫ったことである。これは過去の演習と比較しても台湾本島に最も近接した位置であり、軍事的な威圧レベルを一段階引き上げる明確な政策意図がうかがえる。
さらに東部海域では、大型の**強襲揚陸艦(きょうしゅうようりくかん)**を中心とした編隊を用いた「重要拠点となる港湾の奪取・管理」訓練が実施された。これは台湾の背後(太平洋側)にある重要港湾を制圧し、外部からの支援を遮断する「領域拒否(A2/AD)」能力を検証するものであった。
「台北101俯瞰」映像と認知戦の真実
演習期間中、中国側はSNSを通じて、無人機が台北市のランドマーク「台北101」を真上から見下ろすモノクロ映像を拡散した。これは台湾市民に心理的圧力を与える典型的な**認知戦(心理作戦)**の一環である。
しかし、ドイツの公共放送**「ドイツの波(DW)」によるファクトチェック(2026年1月2日公開)により、この映像の欺瞞性が明らかとなった。 まず、映像内に映り込んだ淡江大橋の建設状況(橋の中央部が連結済み)から、撮影時期は連結式典が行われた2025年9月以降のものであることが判明した。その上で、映像内の気象条件や光の加減が演習当日の現地の状況と一致しないことから、DWは「今回の演習中にリアルタイムで撮影されたものではなく、過去に撮影・ストックされていた映像を、あたかも今撮影したかのように編集して公開した可能性が高い」**と分析している。
また、レンズの圧縮効果を精密に分析した結果、実際には台北上空へ侵入したのではなく、台湾の領空外から超望遠レンズで撮影された、あるいはデジタル加工されたものであると結論づけられた。台湾国防部も「情報の操作に惑わされないように」と注意を喚起している。
米国の態度の乖離:トランプ氏の沈黙と国務省の警告
今回の演習に対する米国の反応は、非常に複雑な様相を呈した。演習終了直後の2026年1月1日、米国国務省は公式声明を発表。トミー・ピゴット副報道官を通じて、中国に自制を求め、台湾への軍事的圧力を即時停止するよう強く促した。声明では「武力や脅迫によるいかなる一方的な現状変更にも反対する」という従来の立場を再確認している。
その一方で、トランプ大統領の態度は対照的であった。フロリダ州マール・ア・ラーゴにて記者団から演習への見解を問われた際、トランプ氏は「心配していない(Not concerned)」と発言し、習近平国家主席との個人的な親密さを強調するにとどまった。
この温度差について、識者はトランプ氏の予測不能な外交スタイル(いわゆる「ハイド氏型」の性格)が、米国の対中戦略に不確実性をもたらしていると指摘する。米国が台湾を民主主義の価値を共有するパートナーと見るのか、あるいは経済的交渉のための「手駒」と見なすのか。台湾国内では「米国がいれば安泰である」という固定観念を脱却し、自衛能力の更なる強化を模索する動きが加速している。
「グレーゾーン事態」常態化の予感
演習「正義使命-2025」は、12月31日午後6時に「全任務の完了」が報告された。しかし、中国海警局が民間船への「臨検・拿捕」を訓練項目に加えたことは、平時と戦時の境界を曖昧にする「グレーゾーン事態」の常態化を予感させる。台湾海峡の平和と安定は、半導体サプライチェーンをはじめとする世界経済の生命線である。国際社会には、武力による一方的な現状変更を許さない強い結束と、冷静な事実確認に基づいた対応が求められている。
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