「脱出」を3回連呼した1分間の緊迫。F-16V墜落の全容
2026年1月6日午後7時29分、台湾の制空権を支える最新鋭戦闘機、F-16AM(F-16V仕様)が花蓮県豊濱郷の東方10海里付近で消息を絶った。機体番号6700の同機を操縦していたのは、空軍士官学校108年組の辛柏毅大尉。午後6時17分に花蓮基地を離陸し、夜間訓練を実施していた帰還途中の出来事だった。
空軍が公開したレーダー記録と通信記録によれば、墜落前のわずか1分間に緊迫した事態が重なっていた。午後7時27分30秒、辛大尉は雲中で編隊を見失う「Two lost」を報告。その直後から高度が急激に下がり始め、28分18秒には「高度が下がり続けている」と無線で伝えた。そして28分22秒、辛大尉は「脱出予定、脱出、脱出」と、射出座席による緊急脱出を試みる旨を3回連呼。しかし、高度1,700フィートで機影がレーダーから消失した後、パラシュートの脱出設備から発信されるべき救助信号(ビーコン)は確認されなかった。空軍は現在も、辛大尉が実際に機体から射出されたかどうかの確証を得られていない。
空間識失認とMMC故障が招いた複合的要因
今回の事故で注目されているのが、機体の心臓部である「モジュール化ミッションコンピュータ(MMC)」の故障だ。辛大尉は墜落前、MMCに不具合が生じていることを基地へ報告していた。MMCはレーダーや武器システム、航法データを統合管理する中枢であり、この故障がパイロットの状況判断を著しく阻害した可能性がある。
さらに空軍は、夜間訓練の「四大殺手(4大キラー)」の一つである「空間識失認(バーティゴ)」が事故の直接的な引き金になったとみている。空間識失認とは、パイロットが平衡感覚を失い、自機の姿勢や高度を誤認する現象だ。特に夜間の海上飛行では、海面の反射や雲の状態により視覚的な錯覚が起きやすく、MMCの故障によって計器への信頼が揺らいだことが、さらなるパニックや判断ミスを誘発した可能性も否定できない。
事故を受けて、空軍は即座に同型機の演習任務を停止する「天安2号」を発令した。今回の機体は「F-16V仕様」への近代化改修を終えたばかりの機体であり、最新の軍事技術を投入した機体でも防げなかった事故の背景には、訓練環境の過酷さや整備体制の問題が潜んでいるとの指摘もある。
悪天候下の捜索と新婚パイロットへの祈り
現在、現場海域では陸海空を挙げた懸命の捜索が続けられている。国家捜索救助センターは、松山基地のS-70C-6捜索ヘリや、屏東基地のC-130H輸送機、さらには夜間捜索能力の高いUH-60Mブラックホークを投入。海軍や海巡署の艦艇も周辺海域を捜索しているが、現場は最大風速が風力8に達し、視界不良と高波が救助隊の行く手を阻んでいる。
パイロットの辛柏毅大尉は、同じく空軍に勤務する妻とフィンランドへ新婚旅行に行ったばかりで、帰国してわずか2日後の事故だった。2023年には台中清泉崗基地の一般公開で解説官を務めるなど、将来を嘱望された若きエリートである。頼清徳総統は「全ての国軍兵士は国家の支柱である」と述べ、全力での捜索を指示した。澎湖県出身の辛大尉の無事を祈り、台湾全土で「集気(祈りを集める)」の動きが広がっている。
[出典] F-16墜海 飛官三喊跳傘無求救訊號 F-16夜訓花蓮墜海 飛官跳傘搜救中 廈門地盤工被禁外出食飯? 警方闢謠揭真相有片
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