台湾立法院(国会)は24日、新会期の開幕に伴う与野党党団協商を行い、行政院(内閣)が提出した1兆2500億台湾ドル規模の「国防特別条例草案」を、3月6日に委員会へ付託し審議を開始することで合意した。同案は野党側の反対で10回にわたり阻止されてきたが、ようやく審議が動き出す。
今回の合意により、行政院版は民衆党版や今後提出される国民党版と併せて、外交および国防、財政の両委員会で一括審議される。背景には、米国との軍事調達に関する3項目の発注書(LOA)が3月15日に期限を迎えるという切迫した事情がある。期限内に予算が通過しなければ調達案が取り消される恐れがあり、顧立雄国防相は先行して署名できるよう国会の権限授与を求めている。
卓栄泰行政院長(首相)は「国防専門性は野党が主導すべきではない」と牽制し、早期成立を呼びかけた。一方、国民党内では予算規模を8000億台湾ドル程度に抑える案や、米国承認済みの項目に限定する案など、複数の意見が分かれている。韓国瑜立法院長(議長)は、地政学的環境の厳しさの中で賢明な判断を下し、危機を回避するよう各党に強く求めた。
1.25兆ドルの巨額予算と対米軍事調達の「3月15日」の壁
行政院が提示している「強化防衛靭性及び非対称戦力計画採購特別条例草案」は、8年間で1.25兆台湾ドル(約400億米ドル)に上る大規模な国防予算案である。この予算は、台湾の防衛能力を飛躍的に高め、中国による軍事的圧力に対する「非対称戦力」を構築するための柱と位置づけられている。しかし、その巨額さゆえに、野党・国民党や民衆党からは「財政規律を損なう」「監督が不十分だ」といった批判が相次ぎ、これまで10回にわたって本会議での付託が否決され続けてきた。
審議入りを阻んできた最大の要因は、予算の使途と透明性である。行政院側は国家の安全保障が最優先であると主張するが、野党側は特定の軍事調達項目が本当に台湾の防衛に最適なのか、精査が必要だという立場を崩していない。この対立により、国防部が進める米側との契約スケジュールに大きな狂いが生じている。
特に緊迫しているのが、3月15日に期限を迎える3項目の軍事調達発注書(LOA)だ。LOAは米国から提供される正式な見積書兼契約書であり、期限を過ぎれば価格や納期が再交渉となり、最悪の場合は調達計画自体が白紙に戻る可能性がある。顧立雄国防部長(国防相)が、予算未成立の状態でも先行して署名できるよう立法院に授権を求めたのは、この期限が「待ったなし」の状態にあるからだ。これに対し、国民党の馬文君委員らは「期限を盾に国会に圧力をかけるのは本末転倒だ」と反発しており、審議の場でもこの「期限の妥当性」と「授権の是非」が激しい議論の焦点となることは間違いない。
与野党の思惑と複雑な党内事情、米国の視線
今回の合意に至る過程では、各党の複雑な政治的思惑が交錯した。当初、強硬な姿勢を見せていた国民党内でも、一部の青壮派委員からは「軍事調達を闇雲に阻止し続ければ、有権者から『国家安全保障を軽視している』と見なされるリスクがある」との懸念が浮上した。そのため、付託を認める代わりに、自党案を提出して予算を大幅に削る、あるいは項目を絞り込むことで主導権を確保する戦略に転換した。現在、国民党内では徐巧芯委員らが推す8000億台湾ドル規模の修正案と、より慎重に米側が承認済みの項目に限定すべきとする案の間で調整が続いており、3月5日までに出される最終案が注目される。
一方、キャスティングボートを握る民衆党は、すでに独自の特別条例案を付託済みだが、その予算規模は4000億台湾ドルと、行政院版の3分の1以下に設定されている。民衆党は「必要な防衛力は確保するが、無駄な支出は排除する」という実利的な立場を強調しており、委員会審査では行政院版と民衆党版、さらに国民党版の間で激しい妥協点の探り合いが行われるだろう。
この問題は台湾国内に留まらず、米国側の強い関心も集めている。米国の超党派議員37人が韓国瑜院長に対し、国防特別条例の速やかな通過を求める書簡を送った事実は、対台湾武器売却が米国の対中戦略において重要なパズルの一片であることを示唆している。韓国瑜院長が「地政学的衝突が激化する中で台湾が耐えられる限界」に言及したのは、米中対立の狭間に立つ台湾の置かれた危うい立場を強調したものである。3月6日からの委員会審査は、台湾の防衛産業への波及効果や、今後の米台軍事協力の質を左右する極めて重要な転換点となる。
[出典]
- 朝野達共識 政院版軍購條例3/6付委 藍版待凝聚共識後提出 – 世界新聞網
- 與民眾黨版本併案審查 政院版國防特別條例 三月六日付委 – 自由時報
- 韓國瑜協商奏功!行政院版1.25兆軍購條例3/6付委審查 – Newtalk新聞
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