台湾野党が頼清徳総統の弾劾手続きを開始 「憲法軽視」への反発 2026年5月の可決目指す

政治

異例の総統弾劾案提出:財政収支割当法を巡る法治の危機

2025年12月23日、台北の立法院(議会)議事運営委員会において、台湾政局の歴史的な転換点となる決定がなされた。最大野党の国民党と第2野党の民衆党(以下、野党連合)が、頼清徳総統に対する弾劾案を正式に提出し、議席数の優位を背景にこれを12月26日の本会議議程に組み入れた。

今回の弾劾案提出の直接的な原因は、地方自治体への税収配分を大幅に増額する**「財政収支割当法」**の改正案を巡る対立だ。立法院を通過した同法案に対し、卓栄泰行政院長が署名および執行を拒否。頼総統がこの方針を全面的に支持し、憲法第72条に定められた「法案公布の義務」を果たしていないことが、野党側から「憲法を破壊し国政を混乱させる行為」であると激しく指弾されている。

野党側は、行政権が立法権を不当に軽視する現状は、民主主義と法治国家の根拠を揺るがす重大な事態であると強調。憲法遵守の観点から、総統の責任を問う弾劾手続きは不可避であると主張している。一方、与党・民進党側は、国家予算に深刻な影響を及ぼす法案への正当な対抗措置であり、合憲の範囲内であると反論。双方の主張は平行線をたどっている。

黄国昌院内総務が描く「2026年5月20日」への長期戦ロードマップ

総統弾劾の成立には、全立法委員の2分の1(57議席)による発議に加え、3分の2(76議席)以上の同意が必要という極めて高い法的壁が存在する。現在、国民党と民衆党の合計議席は60議席に留まっており、野党のみでの弾劾成立は現時点では困難な状況にある。

これに対し、民衆党の黄国昌院内総務および国民党の羅智強書記長は、弾劾を単なる議会内での手続きに終わらせず、長期的な国民運動へと展開する戦略を打ち出した。

その具体的な計画は、立法院内での公聴会や、総統を直接招致しての説明・質疑(全議員参加の委員会)に留まらない。黄氏は、台湾全土の「全22県市」で大規模な説明会を順次開催し、直接国民に頼政権の憲法違反を訴える方針を表明した。議場外の世論を最大限に喚起した上で、頼総統の就任2周年となる2026年5月20日前後に、最終的な弾劾案の採決を行うという異例のスケジュールを提示している。これは法的な解職のみならず、政権の信を問う政治的な総括を狙ったものといえる。

司法と立法の二面作戦:大法官への告発と民主主義の行方

野党の攻勢は、議場外や弾劾手続きだけに留まらない。22日には、国民党の複数の立法委員が台北地方検察署を訪れ、憲法判断を担う大法官(最高裁裁判官に相当)5名を職務放棄および不当裁判の疑いで告発した。野党側は、これら大法官が政権に有利な判断を下すために審理プロセスを不当に操作したと批判を強めている。

民進党の王義川委員らは、成立の可能性が極めて低い弾劾案を強行することは、国会機能を麻痺させ、総統を貶めるための「政治的なパフォーマンス」に過ぎないと反発。23日の議事運営委員会では、国民党の委員が反対意見を押し切り可決を宣言したことで、与野党間で激しい罵り合いが演じられた。

現在、台湾の民主主義は、立法権と行政権の激突に加え、司法の公正性までもが激しい論争の的となる未曾有の事態を迎えている。12月26日の本会議を皮切りに、来年5月の決戦に向けた政治的な対立はさらに激化することが予想される。


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