鄭麗文氏が国民党主席に当選 元民進党の台湾独立派 2028年政権交代目指す

政治

鄭麗文氏、国民党史上2人目の女性主席に就任

台湾の最大野党・中国国民党は10月18日、党主席選挙を実施し、候補者の鄭麗文氏が得票率50.15%で勝利した。国民党史上で女性が党首に選ばれるのは、洪秀柱氏に続いて2人目となる。投票率は39.46%で、鄭氏は開票序盤から終始優勢を保ち、前副主席の郝龍斌氏を35.85%で抑えた。
選挙後、党副主席の連勝文氏が中央党本部で結果を発表し、正式な承認は中央選挙監督委員会によって21日に公告される見通し。党の全国代表大会は11月1日に開催され、新旧両主席の交代式が行われる。


学運出身の「闘将」 民進党から国民党へ転身

鄭麗文氏は1990年代初頭の「野百合学運」出身で、若い頃は台湾独立を支持し、民進党に参加して国民大会代表や行政院報道官を務めた。
その後、党方針への不満から2005年に離党し、連戦氏の招きで国民党に入党。立法委員を2期務めた。父親は陸軍政治戦少校で、軍人住宅街「眷村」で育ったことから、軍系・公務員層を中心に厚い支持を得ている。
中央社は鄭氏を「ダークホース」と評し、「伝統的な保守ブルー陣営とは異なる戦闘的なスタイルが党員に響いた」と伝えた。風伝媒も「鄭氏の“戦闘派”の印象が党内で共鳴を呼んだ」と分析している。


「2028年の政権交代」へ結束呼びかけ

当選後、鄭氏は「任期中に国民党を台湾第一の政党にし、2028年には政権交代を実現する」と宣言した。演説では、与党・民進党に対して「台湾はこれ以上内耗してはならない。内部に敵をつくる政治を終わらせるべきだ」と呼びかけ、「対立ではなく共栄を選ぶ時だ」と訴えた。
朱立倫前主席は「本当の苦労はこれからだ」と激励し、他の候補も祝意を示した。郝龍斌氏は「党員の選択を尊重し、新体制を支える」と述べ、羅智強氏は「選挙の終わりは団結の始まり」と呼びかけた。


対中関係の舵取りと北京の視線

国民党は長年、北京との関係を重視してきた。支持者の一部は「安定と経済の基盤」と捉える一方、批判的な立場からは「中国の影響力拡大」を懸念する声もある。
選挙期間中、郝氏支持派の趙少康氏が「中国本土のネット世論が介入した」と指摘したが、台湾の国家安全部門は確認していない。中国国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は「中方は国民党の選挙を注視しているが、ネット上の言論は政府を代表しない」と釈明した。
北京と頼清徳政権の関係は緊張しており、鄭氏の就任は今後の両岸関係に新たな影響を与えるとみられる。


他党の反応と台湾政治への波及

民衆党の黄国昌主席は鄭氏に祝意を伝え、「女性政治家の登用は台湾民主の深化を象徴する」と評価。「両党が政策協調を進め、共に国家を守る政治を構築してほしい」と述べた。
民進党の呉崢報道官は「主権を守り台湾の安全を党益より優先することを期待する」と強調し、「違憲・違法な法案を提出すべきではない」と牽制した。
鄭氏は今後、2026年の統一地方選(九合一選挙)と2028年の総統選で、頼清徳政権との直接対決が焦点となる。


分析:保守勢力の再編と女性リーダーの象徴性

鄭氏の勝利は、国民党内の世代交代とイメージ刷新の象徴とも言える。党内保守派と若手改革派をつなぐ存在として、党の再建に取り組む構えだ。北京との関係修復と、台湾社会の分断修復という二重の課題にどう取り組むかが今後の試金石となる。
政治経験と強い発信力を兼ね備えた「女性闘将」の登場は、台湾政治における女性リーダーの存在感をさらに高める契機となりそうだ。


[出典リンク]
https://www.cna.com.tw/news/aipl/202510180182.aspx
https://udn.com/news/story/122404/9079528
https://www.dw.com/zh/a-74410438

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