台湾、外国人労働者受け入れを拡大 ホテルや港湾も 東南アジアにリクルートセンター開設へ

経済

台湾行政院、「外国人雇用制度改善方針」を承認

台湾の行政院は10月30日、外国人労働者(移工)の受け入れを大幅に拡大する「外国人雇用制度改善方針」を正式に承認した。制度は、企業が台湾人労働者の給与を月2000台湾元(約1万円)引き上げれば、外国人労働者を1人追加雇用できる仕組みで、外国人比率の上限も40%から45%に引き上げる。
契約期間は3年単位とし、更新時には再度の賃上げを義務づける。行政院は、この制度により4年間で約20万人の台湾人労働者が賃上げの恩恵を受けると試算している。

この政策は、長期化する人手不足を背景に、国内産業の生産力を維持しながら賃金水準を底上げすることを目的としている。
👉 詳細報道は中央通信社(CNA)を参照。


熟練人材の長期定着を促す制度改正

今回の政策では、外国人労働者が6年間勤務後に中堅技術職へ転換できる上限25%を撤廃し、100%留用を可能にする。企業は経験豊富な人材を長期的に確保でき、産業の安定につながると期待される。
同時に、政府はインドネシア、ベトナム、フィリピン、タイなど主要な人材供給国に「国際労働力リクルートセンター」を設置し、仲介業者を介さずに国対国で直接採用する方針を打ち出した。
この「国際採用」制度は、透明性を高め、仲介手数料や不正取引の削減にもつながるとされる。
👉 制度概要は経済日報の記事でも詳述されている。


宿泊業・港湾業など人手不足分野を重点支援

新制度は、特に宿泊業や港湾作業など深刻な人手不足分野で効果を発揮すると期待されている。これらの業種では外国人中堅技術人材の受け入れが正式に解禁され、台湾経済のサービス業基盤を支える施策となる。
労働部によれば、政府はまず1〜2カ所の国際リクルートセンターを試験的に設置し、段階的に拡大する計画を進めている。

内部関連ページとして、「台湾の宿泊業と人材不足問題の現状分析(AlertChina)」「東南アジアからの人材流入が変える台湾労働市場(AlertChina)」なども参照できる。


労働団体が強く反発 「同一労働・異賃金」の固定化を警戒

一方で、労働団体や野党議員は制度に強く反発している。聯合報系(udn)の報道によると、労働団体は「同工不同酬(同一労働・異賃金)」の構造が拡大し、台湾人と外国人の賃金格差が固定化されると批判した。
立法委員の林國成氏は「病急乱投医(場当たり的な対策)だ」とし、政策が選挙を意識した人気取りではないかと指摘。蔡易餘委員も「待遇改善より受け入れ拡大が先行している」と懸念を示した。
👉 反対論の詳細はudn.comの記事を参照。


政府の狙いと課題:賃上げと公正性の両立へ

行政院長の卓栄泰は「賃上げを通じて産業と雇用の両方を強化し、本国労働者・外国人・企業が共に成長する仕組みだ」と強調した。政府は、制度に賃上げ義務を組み込むことで台湾人労働者の待遇改善を保証できると主張する。
しかし、形式的な賃上げで終わる可能性や、監督・人権保護の体制不備を指摘する声も根強い。外国人労働力への依存を深めつつ、社会的公正と経済競争力の両立をどう実現するかが今後の焦点となる。


分析:構造改革か、賃金停滞の延命策か

今回の「国際労働力精進方案」は、台湾が直面する構造的な人手不足を前提とした“賃上げ連動型労働力政策”である。
その意義は、単なる受け入れ拡大ではなく、賃金上昇・雇用安定・労使協調の三点を同時に成立させる試みにある。
だが、制度運用を誤れば「低賃金定着」や「雇用置換」の副作用を生む危険もある。行政の監督能力と透明性が、政策の成否を左右するだろう。


[出典]
中央通信社(CNA)経済日報聯合報(udn.com)

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