無給休暇の急増と製造業への集中
台湾の労働省が9月16日に発表した最新統計によると、無給休暇(減班休息)を実施する企業は333社に達し、労働者は7334人に上った。前回9月1日の発表から半月で2471人増加し、伸び率は50%に達した。影響は製造業に集中しており、全体の93%にあたる6870人が製造業労働者だった。
特に金属・機械・電機関連産業(いわゆる金属機電工業)が深刻で、231社・5731人が対象。その中核を占める機械設備製造業では125社・3247人が無給休暇となった。中規模企業(従業員100人以上)も16社・2347人に上り、全体の約3割を占めている。
米国関税の影響と産業構造
企業の多くは「顧客が発注を見送っており、注文が安定していないため先行して無給休暇を導入した」と説明する。中でも米国の関税が直撃しており、242社・6246人が影響を受けた。8月末には62.8%だった関税影響企業の比率は、9月中旬には85%にまで拡大。労働省の黄琦雅司長は「関税要因は続いており、人数はさらに増える可能性がある」と述べた。
一方で、突発的な受注が入ればすぐに人員を復帰させる必要があり、無給休暇を早期に打ち切る事例もある。だが、需要が長期的に安定するかは不透明なままだ。
勤務形態の変化と地域への波及
勤務形態にも変化が見られる。無給休暇に入った労働者のうち過半数は週休3日制、さらに約3割は週休4日制に移行した。中部科学園区では従業員100人規模を超えるハイテク企業が新たに無給休暇を導入し、地域全体に影響が広がっている。
政治的波紋と政府の対応策
政界からも懸念の声が上がる。国民党の王鴻薇立法委員は「輸出入や一人当たりGDPの好調データは関税による駆け込み需要の結果にすぎず、実質的な打撃が表れ始めている」と警告。民衆党の林国成立法委員も「伝統産業は生存の危機に直面し、無給休暇の急増は始まりにすぎない」と述べた。
労働省は8月から「強化版雇用安定措置」を導入している。対象となる9業種の労働者は、雇用保険と実際の給与との差額の7割を補助として受給でき、月最大12110元に達する。対象外の業種でも無給休暇中に再教育訓練に参加すれば、1時間190元、月最大17210元の訓練手当を受け取れる。
また、労働団体からは最低賃金の4%引き上げを求める声も出ているが、黄司長は「最低賃金の調整は審議会での議論に基づき、労働省単独で決定するものではない」と説明した。
雇用安定のカギは政策と受注動向
今回の事例は、台湾の製造業が米国関税に大きく依存している現実を浮き彫りにした。無給休暇は解雇回避の暫定策であり、失業リスクを和らげる一方で、労働者の生活不安は強まっている。
労働省は補助金制度を通じて雇用安定を図っているが、受注回復がなければ持続性には限界がある。台湾経済の安定には、関税環境の改善と産業構造の転換が不可欠といえる。