台湾でアフリカ豚熱拡大、全土で生豚と殺・輸送を禁止 台糖「安心豚」ブランドに買いだめ殺到

経済

台湾でアフリカ豚熱が拡大、全国でと殺・輸送を禁止

台中市の養豚場でアフリカ豚熱(ASF)が発生し、台湾当局は11月6日正午まで全国で生きた豚のと殺および輸送を禁止した。農業部(農林水産省に相当)によると、15日間の禁止期間中に待機豚は35万〜39万頭に達すると見込まれ、感染拡大を防ぐ緊急措置として全土で実施された。
アフリカ豚熱中央災害対策センターは10月30日に第42回会議を開き、農業部動植物防疫検疫署で陳駿季部長が会見を行った。陳部長は「第2段階・第3段階の検査を順調に終え、感染ゼロを達成できれば段階的に解禁する」と述べた。

解禁後は1日3万頭を上限に総量管理、価格安定へ調整

陳部長は、屠殺頭数を処理能力に応じて設定し、解禁後は1日3万頭を上限とする総量管理を実施する方針を明らかにした。過剰供給による価格下落を防ぐため、政府は卸売市場の価格を常時監視し、余剰分を冷凍業者に買い取らせて需給を調整する。これにより市場の安定と農家の収益維持を両立させる狙いだ。
この措置は、感染収束後の混乱を抑える「ソフトランディング政策」として位置づけられており、台湾の畜産経済への影響を最小化することを目指している。

台糖の冷凍豚肉に買いだめ殺到、嘉義で五花肉が即完売

豚肉供給の逼迫が懸念されるなか、経済部(経済省)は市場安定のため国営企業・台湾糖業公司(台糖)に冷凍豚肉の放出を指示した。台糖直営の「蜜鄰(ミーリン)」スーパーには買いだめ客が殺到し、嘉義県と嘉義市の2店舗では家庭料理に欠かせない五花肉(豚バラ肉)や排骨(スペアリブ)が即完売。店舗は補充対応に追われた。
台糖の「安心豚」シリーズは品質と検査体制の厳格さで知られ、消費者の信頼が厚い。店員によると「冷凍肉の購入が急増しているが、台糖の豚肉は十分に補充されており欠品はない」という。

台糖の在庫362トン、全国20店舗で供給継続

経済部によると、台糖の冷凍豚肉在庫は全国で約362トンに達し、全国20店舗の蜜鄰スーパーで販売中。価格は据え置きで値上げはなく、供給量は市場需要を十分に満たしている。
嘉義県と嘉義市には各1店舗ずつの直営スーパーがあり、県内には鹿草、岸内、東石鰲鼓、南靖の4カ所に養豚場を保有。岸内場は「廃水全回収・ゼロ排出」の環境目標を達成し、鹿草場では屏東の東海豊豚場をモデルとするスマート環境型養豚場が建設中である。環境負荷の低減と生産効率の向上を両立させ、台湾畜産の持続可能性を高めている。

自然災害にも耐える生産体制と、再評価される国営ブランド

台糖は7月の豪雨で東石鰲鼓湿地の養豚場が浸水し、1万頭超の豚が溺死する被害を受けたが、災後には董事長(会長)が「獣魂碑」で供養を行うなど、畜産再建への姿勢を示した。
アフリカ豚熱による防疫強化を背景に、消費者の購買行動は国営ブランドへと移行。「安心豚」シリーズは再び注目を集め、新型コロナ時の台糖アルコール争奪戦を彷彿とさせる状況となっている。台糖は台湾の民生安定を象徴する存在として、政府の危機管理と消費者信頼の両面で中心的な役割を担っている。


[出典]
🔗 聯合報:非洲豬瘟衝擊 台糖冷凍豬肉熱銷
🔗 聯合報:全台活豬禁宰禁運 待宰豬上看39萬頭

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