台湾・頼清徳政権が原発再稼働へ方針転換か AI需要と脱炭素、地政学的リスクへの対応急ぐ

経済

頼総統、第2・第3原発再稼働申請へ AI需要で方針転換

頼清徳総統は21日、台中市で開催された磐石会の第28・29期会長交代式典に出席し、第2および第3原子力発電所について「再稼働の条件を備えている」との経済部の評価を受け、台湾電力(台電)が今月末に再稼働計画を核能安全委員会(核安会)へ提出することを明らかにした。2025年5月の原発全面停止により一度は「非核家園(脱原発社会)」を実現したものの、AI産業の急成長に伴う電力需要増と国際的な脱炭素要求に対応するため、事実上の方針転換に踏み切る。

頼氏は翌22日、野党側から出ている「政策の矛盾」との批判に対し、第3原発2号機の停止によって脱原発目標は既に達成されたと主張した。その上で、今後の再稼働には「核安無慮(安全確保)」「核廃有解(核廃棄物問題の解決)」「社会共識(社会的合意)」の3原則が不可欠であると強調した。再稼働計画では、米ウェスチングハウス社やGE社などの国際企業と連携し、厳格な自主安全検査を実施する方針だ。

また、緊迫する中東情勢に関連し、石油備蓄は法定の90日を超える100日分以上、天然ガスも12〜14日分を確保していると説明。2026年6月には米国産燃料が到着する見通しを示した。頼氏は「政治も経済も逆戻りは許されない」と述べ、地政学的圧力が強まる中で、小型モジュール炉(SMR)など次世代技術への投資と再生可能エネルギーの拡充を並行し、国家のエネルギー強靭性を高める決意を語った。

産業構造の変化と電力需要の急増

今回の再稼働検討の背景には、台湾の産業構造が劇的な変化を遂げているという実情がある。特にAI(人工知能)時代の到来により、台湾が強みを持つ半導体製造や演算センター(データセンター)の設置が加速しており、必要とされる電力は当初の政府予測を大幅に上回るペースで推移している。

世界的な半導体受託製造大手であるTSMC(台湾積体電路製造)をはじめとするハイテク産業の電力消費量は膨大であり、安定した電力供給は国家競争力に直結する。頼政権はこれまで、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの拡充により、原発3箇所の発電量を代替することに成功してきたと説明してきたが、急増する需要を再生可能エネルギーのみで賄い続けることの難しさに直面している。

さらに、欧州連合(EU)が導入した炭素国境調整措置(CBAM)への対応も急務だ。台湾の輸出企業が国際競争力を維持するためには、使用する電力が「低炭素」または「脱炭素」であることが必須条件となる。再生可能エネルギーの不安定さを補完しつつ、二酸化炭素を排出しない「ベースロード電源」として、停止中の原発の有効活用が浮上した形だ。

地政学的リスクとエネルギー安全保障

中東での紛争継続や地政学的な緊張の高まりも、頼政権の背中を押している。台湾はエネルギー自給率が極めて低く、燃料の輸入ルートが遮断されるリスクに常に晒されている。石油や天然ガスの備蓄日数を法定以上に積み増している現状は、有事への備えを象徴している。

頼総統が言及した「エネルギー・レジリエンス(強靭性)」とは、単なる量の確保だけでなく、供給源の多角化と安定性を意味する。原発の再稼働は、化石燃料への依存度を下げ、外部環境の変化に強いエネルギー構成(エネルギーミックス)を構築するための現実的な選択肢として位置付けられた。

また、次世代原子力技術としてのSMR(小型モジュール炉)や核融合への関心も、レジリエンス強化の一環だ。従来の大型原発に比べ安全性が高く、分散型電源としての活用が見込めるこれらの技術に対し、頼政権は「条件を満たせば開放的である」との姿勢を鮮明にしている。これは、従来の「脱原発」というイデオロギーよりも、経済の持続可能性と国家安全保障を優先する実利主義へのシフトを意味している。

今後の焦点:社会的合意と廃棄物処理

再稼働への道筋は示されたものの、クリアすべき課題は山積している。頼総統が掲げた「3原則」のうち、特に「社会的合意」と「核廃棄物問題の解決」は、長年台湾社会を二分してきた極めて繊細な問題だ。

第2原発が位置する新北市や、第3原発がある屏東県などの地元自治体との調整に加え、使用済み核燃料の最終処分場の選定は、過去数十年間にわたり進展が見られていない。立法院で修正された「核子反応器設施管制法(核管法)」に基づき、政府は法に従い行政を進めるとしているが、住民感情や環境団体の反発をいかに和らげ、政治的なコンセンサスを形成できるかが、再稼働の成否を分けることになる。

頼政権は、風力、太陽光、水素エネルギーなどのグリーンエネルギー開発を今後も強力に推進し、「原子力との並行」を強調することで、環境派への配慮も示している。3月末に核安会に提出される再稼働計画が、安全性と社会的納得性をどこまで担保できるかに、台湾内外の注目が集まっている。

[出典]

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