台湾の情報機関である法務部調査局は8月5日、中国資本企業17社が台湾で違法にハイテク人材を募集していた疑いで一斉捜査を実施したと発表した。AI(人工知能)開発競争が世界的に激化する中、中国企業による半導体やIC(集積回路)設計分野の人材引き抜きを阻止する狙いだ。調査局は2020年末に専門プロジェクトを設置して取り締まりを進めており、これまでに100件を超える事件を捜査している。(写真は法務部調査局のウエブサイトから)
台湾、中国企業17社を対象に一斉捜査
調査局によると、近年のAIブームは世界経済と産業構造を大きく変え、各国がAI関連技術の研究開発に注力している。台湾は半導体製造やIC設計産業を中心とするサプライチェーンを基盤に国際競争力を維持してきたが、中国企業による中核ハイテク人材の引き抜きが相次ぎ、競争優位性の流出が懸念されているという。 今回の捜査は2026年4月から計画され、証拠収集を経て、2026年7月13日から8月4日にかけて台北、新北、士林、桃園、新竹、台南の各地方検察署の指揮の下、9つの調査処・調査站が実施した。延べ330人以上の調査員を動員し、64カ所を家宅捜索、114人から事情聴取を行った。
中国企業の手口は「偽装進出」
調査局は、事件を分析した結果、中国企業は「台湾企業や華僑・外国資本企業を装い、実際は中国資本として台湾へ進出する」「当局の許可を受けず営業拠点を設置する」「人材コンサルティング会社を利用し、従業員を形式的に派遣する」といった手法で中国資本であることを隠し、AI、半導体製造、IC設計など先端技術分野の人材を違法に募集していたとしている。 捜査対象となったのは、炬芯科技股份有限公司、鉅泉光電科技(上海)股份有限公司、北京新美互通科技有限公司、上海維安電子股份有限公司、上海坤廷智能科技股份有限公司、深圳瓏城智顕科技有限公司、常州縦慧芯光半導体科技有限公司、深圳市雨陽電子技術開発有限公司、江蘇澳盛複合材料科技有限公司、国科微電子股份有限公司、山東兆通微電子有限公司、芯卓科技(浙江)有限公司、広東賽微微電子股份有限公司、深圳通鋭微電子技術有限公司、北京麦哲科技有限公司、盛美半導体(上海)股份有限公司、浙江索特材料科技有限公司、珠海冠宇電池股份有限公司の17社だった。
上場企業や有力企業も摘発対象
調査局によると、江蘇澳盛複合材料科技有限公司は炭素繊維複合材料の研究開発・製造を主力事業とし、中核製品は世界シェア上位3位以内に入る。同社は台湾当局の許可を受けず、香港企業を通じて台湾法人を設立し、技術者を違法に採用して事業を行っていた疑いがある。 国科微電子股份有限公司はIC設計を主力とする深圳証券取引所上場企業で、中国工業・情報化部から重点IC設計企業に認定され、中国国家集積回路産業投資基金の出資も受けている。2021年11月には米商務省から「軍事エンドユーザー(MEU)」として貿易ブラックリストに指定された。同社は台湾人名義で会社を設立し、台湾当局の許可を受けずに人材を募集していた疑いが持たれている。 深圳通鋭微電子技術有限公司はディスプレーチップ設計・製造を主力とし、中国国内で出荷量首位という。同社は2025年にも調査局の摘発を受けたが、その後新たな体制で事業を再開し、再び許可を受けず台湾に拠点を設置して人材募集を続けていた疑いがある。 珠海冠宇電池股份有限公司は民生用リチウムイオン電池を主力とする上海証券取引所上場企業で、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン向け電池の出荷量は世界有数とされる。同社は台湾事務所の設置許可を経済部から取り消された後も、人材募集などの事業活動を継続していた疑いがある。
技術流出事件への警戒も強化
台湾では近年、中国による技術流出事件への警戒も強まっている。台湾高等検察署は2026年7月、国家安全法や営業秘密法違反などの容疑で台湾積体電路製造(TSMC)の元幹部を起訴し、同社の国家中核重要技術に関する機密情報を中国へ漏えいしたとして懲役7年を求刑した。 さらに台湾検察当局は2026年7月28日、米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)の社員1人を拘束したと発表した。同社員は米国の輸出規制対象となっているエヌビディア製半導体を中国へ密輸した疑いが持たれている。この事件は、米サーバー大手スーパー・マイクロ・コンピューター(Supermicro)の高性能AIサーバーが中国本土および香港・マカオへ違法に輸出された疑いを巡る捜査の一環とされる。 これに対し、エヌビディアの広報担当者は同日、米国の声(VOA)の取材に対し、「半導体チップの密輸は現実的ではない」と電子メールで回答した。同社は製品を主にOEMメーカーなど信頼できる取引先へ販売し、全ての取引が米国の輸出管理規則に適合するよう管理しているほか、小規模な輸出業者や物流事業者についても世界各地で厳格な審査・監督を受けていると説明した。 出典
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2026年8月6日

