花蓮地検がせき止め湖決壊で捜査開始、19人死亡・5人不明
台湾東部・花蓮県の馬太鞍渓で9月23日に発生したせき止め湖(天然ダム)の決壊により、光復郷が洪水に見舞われた。19人が死亡し、5人が行方不明、717人が救出された。花蓮地方検察署は10月15日、業務上過失致死と公務員の職務怠慢の疑いで捜査を開始した。中央政府、花蓮県政府、各郷鎮公所(町村役場)から資料を収集し、避難指示や対応の遅れを重点的に調べている。
検察、中央・地方機関から資料収集
検察によると、事件発生後、中央政府、県政府、郷鎮公所の資料を順次入手しており、今後も捜査の進展に応じて追加調査を進める方針という。現時点では調査が続いており、結論は出ていない。
現地では犠牲者遺族が県長の徐榛蔚(じょ・しんうぇい)氏の前で「避難の呼びかけを聞いていない」と訴えており、検察はこの証言をもとに警報発令や住民避難の体制を重点的に検証している。
議員発言も調査対象、公務員責任を焦点に
立法委員(国会議員)の傅崐萁(ふ・こんき)氏は「台風時の避難業務は郷鎮市区公所が担当する」と発言した。地検はこの指摘を捜査対象に含め、「必要な調査はすべて法に基づき進めている」と説明した。事件は業務上過失致死と職務怠慢を含む「他字案件」として扱われている。
花蓮県政府行政研究処の陳建村処長は「複数の機関が調査を進めており、県政府は通知や対応措置の証拠資料を提出している」と述べ、協力姿勢を示した。
洪水で資料流失、捜査は難航
光復郷公所も洪水被災地にあり、検察が資料提出を求めたが、公所側は「資料は洪水で流失した」と回答。調査の一部が難航している。地元では通信障害や道路寸断の影響で避難情報が伝わらなかったとの指摘もある。検察は関係者の責任分担を明らかにし、必要に応じて刑事責任を追及する方針を示した。
再発防止へ危機管理体制を検証
今回のせき止め湖決壊を受け、中央災害応変センターや内政部(内務省)による防災体制の見直しも求められている。花蓮県は地震や豪雨による山地災害が多く、監視システムや避難訓練の強化が課題となっている。専門家は「地質が脆弱な地域でせき止め湖が形成されると、再発の恐れが高い」と警鐘を鳴らす。今後は早期警報や地質調査のデジタル化など、科学的管理の導入が急務とされる。
[外部リンク]
・中央通信社(CNA)「馬太鞍渓せき止め湖溢流造成嚴重災情」
・Yahoo奇摩即時新聞「花蓮檢方朝過失致死、廢弛職務偵辦」
・聯合報「馬太鞍渓潰決釀19死5失聯」
[内部リンク]
・花蓮でボランディア死去 せき止め湖決壊の被災地でけが 敗血症で息を引き取る
・台湾・花蓮の「せき止め湖」決壊、600万トンの泥が依然残存、再流出の恐れ