芸能界「兵役逃れ」連鎖拡大、虚偽診断で15人摘発
台湾の芸能界で「兵役逃れ(閃兵)」事件が連鎖的に発生している。検察当局は過去8か月にわたる捜査で俳優や歌手など15人を摘発した。発端は俳優・王大陸が2025年2月に心臓疾患を偽装した医療証明書で兵役を回避した疑いで拘束されたことだった。新北地方検察署はその後、5月と10月に計3回の家宅捜索を実施。俳優の修杰楷、陳柏霖、男性グループ「Energy」の張書偉と謝坤達、男性グループ「棒棒堂」の廖亦崟と廖允杰、歌手の陳零九らが高血圧や血圧異常を装ったとして捜査対象となった。
保釈金は15万〜50万元(約70万〜230万円)と幅があり、検察は医師や仲介業者を含む「免役代行ネットワーク」の存在を追及している。台湾では兵役は国民の義務とされ、虚偽申告による免除は兵役法違反として3年以下の懲役刑に問われる可能性がある。
一連の事件は芸能界に深刻な打撃を与え、複数のタレントがCM契約を解除され、番組出演の取り消しが相次いでいる。かつて「清廉なイメージ」が売りだった台湾芸能界にとって、信用失墜の波は業界全体へと広がりつつある。
正反対の姿勢 人気絶頂で入隊した「真の模範」
兵役逃れ事件が拡大する一方、SNS上では「最盛期にも入隊した芸能人」への称賛が相次いでいる。投稿では、故・張雨生、俳優の林志穎、張孝全、楊祐寧、鄭元暢、そしてバンド「動力火車(パワーステーション)」の顔志琳らが「芸能界の清流」として紹介された。
林志穎はブレーク直後に入隊し、除隊後には人気が一層高まった。楊祐寧は24歳のとき600万元の仕事を断って入隊し、「兵役は国民の義務。お金は後で稼げばいい」と語っている。顔志琳は特勤隊で「涼山山鬼」と呼ばれ、体力・精神面の両面で過酷な訓練を経験したという。
ネット上では「こうした正しい行動こそ広く伝えるべき」「芸能人も国民の一人として義務を果たす姿勢が信頼を取り戻す」との声が広がっている。
芸能界の信頼回復が課題
台湾の芸能界は、清廉なイメージと社会的信用を背景に多くのスターを輩出してきた。しかし今回の兵役逃れ連鎖は、業界の信頼を根本から揺るがす事態となっている。
今後の司法手続きで真相が解明され、社会的信頼をどう再構築できるかが問われている。芸能界の姿勢が再び国民の支持を取り戻せるか、台湾社会は注目している。
[関連情報]
台湾国防部(公式サイト)
自由時報「藝人兵役爭議」特集
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