中国重慶市公安、台湾独立志向の民進党議員を「国家分裂罪」で捜査着手

政治

中国・重慶市公安局は2025年10月28日、台湾の民進党立法委員・沈伯洋(シェン・ボーヤン)氏を「国家分裂罪」の疑いで立件したと発表した。
公安当局は、沈氏が市民向けの防衛教育組織「黒熊学院」を立ち上げ、「台湾独立」を鼓吹する活動を行ったと主張。刑法および「懲独22条」に基づき、刑事責任を追及する方針を示した。

重慶公安は同時に「関連情報を把握した市民は通報してほしい」と呼びかけ、通報用メールアドレスと電話番号を公開した。
こうした「越境的な通報制度」は、中国当局が2024年以降強化している「懲独キャンペーン」の一環であり、法的拘束力よりも政治的威嚇効果を狙う動きとみられる。
(参考:🔗RFI報道


懲独22条の法的性格と目的

今回の立件の根拠となった「懲独22条」の正式名称は、
**《『台湾独立』頑固分子の国家分裂・煽動分裂犯罪を法に基づき処罰する意見》**である。
2024年5月、中国の最高人民法院・最高人民検察院・公安部など5部門が共同で発布した政策指針で、台湾独立派に対する刑事訴追や制裁の根拠を定めている。

条文は22項目にわたり、台湾独立の主張や活動、海外での宣伝行為などを「国家分裂罪」「煽動分裂罪」として処罰対象とする内容を含む。
このため台湾メディアや学界では「懲独22条」「懲独法」とも呼ばれ、実質的な越境的圧力装置として機能している。
(参考:🔗香港01報道


沈伯洋氏「台湾人は恐れていない」 SNSで反発声明

沈伯洋氏は43歳、台北市出身で、民進党の安全保障政策を担う若手議員。
自身が主導する「黒熊学院」は、民間防衛教育を目的に設立されたが、中国側はこれを「独立分裂組織」と断定している。

沈氏は立件発表後、SNSで「問題を提起する人、台湾を守る人を排除する——まさに共産党らしい」と投稿。
さらに「これは一年で6回目の嫌がらせだ。次は指名手配か欠席裁判だろうが、台湾人は恐れていない」と反発した。
(参考:🔗中国時報・旺報


台湾政府「中共は台湾に管轄権なし」 越境的圧力を批判

台湾行政院大陸委員会(陸委会)は同日声明を発表し、中国の行為を「法治文明の底線を超えた」と厳しく非難した。
「中共は台湾にいかなる管轄権も持たず、その法律や規範は台湾人民に拘束力を持たない」としたうえで、「台湾人民は《中華民国憲法》に基づき、剥奪され得ない自由と権利を享有している」と強調した。

陸委会の邱垂正主委も「中共の行動は両岸の民意の対立を激化させた。最大の責任は中共自身にある」と述べた。
同委員会は台湾国民に対し、「中国本土に渡航する際は安全を慎重に判断し、違法行為への協力を避けるように」と警告を発した。


法的枠を超えた「懲独政策」の実態

「懲独22条」は正式な法律ではなく、司法部門の「意見書」として施行されている。しかし実際には、越境的な訴追や入境禁止措置の根拠として広く運用されており、中国による台湾統一戦略の法的ツール化と位置づけられる。

専門家の間では、この制度が台湾人の海外活動や言論に萎縮効果を及ぼすことへの懸念が強まっている。
同時に、北京当局が内政的に「国家主権の防衛」を強調し、来年の全国人民代表大会や台湾総統選後の政治的メッセージを狙った可能性も指摘されている。


[出典]
🔗 RFI中文網(2025年10月28日)
🔗 香港01(2025年10月28日)
🔗 旺報(2025年10月29日)

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