太子集団の台湾マネロンに捜査 台北地検が47カ所捜索し25人拘束 米制裁対象者も

経済

台北地検が47カ所を捜索 25人拘束の大規模摘発

2025年11月4日、台北地方検察署は、カンボジア太子集団による台湾での大規模資金洗浄事件を捜査するため、台北市と高雄市で47カ所を同日一斉に捜索し、25人を拘束した。捜査の発端は、2025年10月8日に米国連邦検察官が太子集団創設者・陳志を起訴し、10月14日に米財務省海外資産管理局(OFAC)が台湾籍3人と台湾登記9社を制裁対象に加えたことだ。台湾当局はこの国際情報を受け、組織的資金洗浄の全貌解明へ踏み切った。


暗号資産詐欺・オンライン賭博・強制労働 太子集団の犯罪モデル

太子集団はカンボジアに暗号資産詐欺やオンライン賭博詐欺を目的とした強制労働型施設を展開し、不正に得た資金を複数国に設けたペーパーカンパニーへ移転。その後、豪邸、高級車、不動産の購入を介して資金を合法に見せかける手法を繰り返してきた。陳志は2017年に台湾へ進出し、台湾で洗浄した額は累計45億元に達したとみられる。

台湾での主要拠点は、天旭国際、尼爾公司、台湾太子公司、顥玥公司の4社で、台北101ビル内には「私人招待所」と呼ばれるVIPフロアも設け、警戒を強めた捜査当局でも入館に難航したという。現場には100台近いパソコンが残され、データ解析が続けられている。


拘束された25人 幹部から技術者まで広範囲に及ぶ

拘束された人物には、台湾側の中核を担った幹部が複数含まれる。

  • 辜淑雯(天旭国際人事責任者):証拠隠滅・逃亡の恐れで勾留・接見禁止
  • 王昱堂(台湾太子公司の実質責任者):11月5日に送致
  • 黄婕・施亭宇(米国制裁対象):翌5日複訊
  • 劉純妤(中国籍側近の台湾助手):15万元保釈
  • 張芷寧(天旭国際のプログラマー):20万元保釈

幹部、技術スタッフ、資金管理者、パラオ拠点の協力者まで幅広い層が台湾側ネットワークに組み込まれ、組織の多層構造を示している。


不動産・高級車・銀行口座 差し押さえ総額は45億2766万元

台北地検は不正資産を保全するため、和平大苑11戸を含む不動産18件、高級車26台、銀行口座60件を差し押さえた。不動産は総額38億1421万元、高級車は4億7758万元、銀行口座の残高は2億3587万元で、押収資産総額は45億2766万元に上る。

特に高級車については、ロールスロイス、ブガッティ、マクラーレン、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェなどスーパーカーが多数並び、米国制裁公表後には一部を隠匿しようとする動きも確認された。中古車サイトで1900万元で売却を試みた車両もあり、捜査局がこれを押収した。


国際制裁が台湾捜査を後押し 東アジアの犯罪対策にも波及へ

本件は、米国による国際犯罪組織への制裁が、台湾の捜査を後押しした典型例であり、太子集団が構築した国境を越える資金移動網が可視化された点に大きな意義がある。暗号資産、オンライン賭博、偽装不動産投資、パラオを利用した隠れ蓑事業など、多様な領域を横断する犯罪モデルは、東アジアの金融監督当局にとっても警鐘となる。

国際制裁と国内捜査の連動は、新興型犯罪の抑止に必須となりつつあり、台湾における今後の金融規制や対策強化の方向性を占う事例と言える。


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