深センAPECを巡る中台摩擦 「一中」要求と台湾の反発、米国の支持が交錯

深センAPECを巡り緊張高まる

中国が2026年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を深センで主催するのを前に、台湾の参加を巡り緊張が高まっている。中国外交部と国務院台湾事務弁公室は、台湾が深センAPECに出席するには「一つの中国」原則の順守が前提だと相次いで表明した。APECの覚書と慣例に基づき「中国台北」の扱いを継続する方針で、政治的前提を明確化した形である。
この発言は、ドイツ公共放送ドイチェ・ベレ(DW)をはじめ複数の国際メディアが報じた。

台湾外相「国際的な約束に反する」

台湾外交部の林佳龍外相は強く反発した。昨年ペルーでのAPEC開催時、中国は議長国申請の一環として台湾の平等参加と安全確保を支持する書面を提出していた。林氏は、中国が今回あらためて「一中」前提を付けたことは、当時の国際的な約束に違反すると批判した。
台湾は、加盟メンバーとしての権利を守るため、理念を共有する国々との連携を強化するとしている(*参照:AlertChina「台湾の国際参加に関する分析」)。

陸委会は過去の北京APECを例示

台湾の対中政策を主管する大陸委員会(陸委会)の梁文傑副主任委員も、来年の参加環境は厳しいとの認識を示した。梁氏は台湾が代表(蕭万長)を派遣した2014年北京APECの事例を挙げ、中国が特使による正式な招待状手交を避け、国台弁副主任が伝達した異例対応を指摘した。
さらに、蕭万長が日本・米国要人と会談しても、会議期間中に公表できず、帰国後に説明せざるを得ない状況だったと語った。この経験から「来年が当時より良くなるとは限らない」と述べ、深センAPECでの台湾の扱いに強い警戒感を示した。

米国は台湾の「十分かつ平等な参加」を支持

一方、米国務省は台湾のAPEC参加を全面的に支持する姿勢を明確にした。米国は「台湾(=中華台北)は十分かつ平等に参加すべきだ」と述べ、中国が2026年議長国申請時に確認したAPECの原則にも合致すると指摘した。
また「参加者の安全確保は最優先」と強調し、中国に対し必要な安全手続きの徹底を求めている(*参照:AlertChina「東アジアの安全保障環境とAPEC」)。

中台・米中の政治環境が交錯

APEC加盟国の中には台湾と正式外交関係を持つ国はなく、政治的摩擦を避けるため台湾は「中華台北」名義で参加してきた。中国の主催は2001年上海、2014年北京に続き3度目であり、今回の深セン開催は台湾の扱いを巡って国際的な注目が集まる。
陸委会の梁氏は、会議まで1年あるため両岸関係や国際環境の改善余地は残るとしつつ、「現時点では2014年の経験を例示したにすぎない」と述べ、慎重姿勢を崩していない。


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