エヌビディアCEOが台湾を電撃訪問 3ナノ視察でTSMCとの連携を強調

経済

ジェンスン・ファン氏が台湾を電撃訪問 22時間の「極短日程」の狙い

米エヌビディアの最高経営責任者、ジェンスン・ファン氏が7~8日に台湾を電撃訪問した。行程はわずか22時間という極めて短いものだったが、その内容は濃密だった。

7日午後に台南へ到着したファン氏は、台湾積体電路製造(TSMC)が南部科学園区に構える18工場を訪れ、次世代AI半導体の要となる「3ナノ工程」の量産ラインを視察した。

AIサーバー需要が急拡大する中、先端プロセスの逼迫は深刻化している。エヌビディアの最新GPU群はTSMCの3ナノ・2ナノ工程に依存しており、今回の視察は量産能力の確認と供給網強化を目的としたものとみられる。

台南滞在は約5時間にすぎなかったが、ファン氏は従業員と交流し、増産に向けた協力に感謝を伝えた。AI革命の進展でTSMCの役割がいっそう重要になるなか、米台サプライチェーンの戦略的連携も示唆される。


TSMC運動会に登壇 「TSMCがなければ今日のエヌビディアはない」

8日午前、ファン氏は新竹県立体育場で開催されたTSMCの年度運動会に特別来賓として登場した。TSMC董事長の魏哲家氏は昨年「3兆男」と呼ばれたファン氏について、「今年は5兆男になった」と紹介し、会場は大いに沸いた。

スピーチでファン氏は、中国語と英語を交えながらこう語った。

「台積電がなければ、今日のエヌビディアは存在しない」
「あなたたちは台湾の誇りであり、世界の誇りだ」

ファン氏は30年前の協力の原点を振り返り、TSMCとエヌビディアがともに小規模だった時代からの歩みを強調した。現在、両社は世界のAIサプライチェーンを牽引する存在に成長している。

また、ファン氏は台積電創業者の張忠謀氏への特別な謝意も表明した。

「初めて台湾を訪れた際、張忠謀氏がTSMCに招いてくれた。それが私と台湾の最初の再会だった」

この発言は、半導体産業史におけるTSMCの貢献と、両社の長期にわたる信頼関係を象徴する。


AI需要の爆発が背景 台湾の戦略的重要性は一段と増す

ファン氏の電撃訪問の背景には、次の3点がある。

① 世界的なAI需求の急拡大

ChatGPT以降、AIサーバー向け半導体の需要は爆発的に増加し、先端ロジック不足が長期化している。エヌビディアはGPUの事実上の標準となっており、TSMCの先端製造なしには世界市場が成立しない。

② 米中摩擦下の供給網再編

米国の輸出規制により、エヌビディアは中国向け製品の再設計を進める一方、TSMCは安定供給の中心として位置づけられている。

③ TSMCの圧倒的な製造力

3ナノ工程は高度な歩留まり管理が必要だが、TSMCは良率と品質管理に優れ、ファン氏自身が「最も信頼できる量産パートナー」と評価している。


エヌビディア×TSMC 世界のAI競争を左右する両社連携

今回の訪問は、エヌビディアとTSMCの協業体制が経営トップレベルも含めて極めて強固であることを示した。エヌビディアの設計力とTSMCの製造力が結びつくことで、世界のAI基盤の大部分が支えられている。

AIが社会・産業を大きく変える局面にある中で、台湾の位置づけは一段と強まりつつある。


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