台米両政府は15日、ワシントンで関税交渉の総括会議を行い、投資協力覚書(MOU)を締結した。トランプ米政権が台湾製品に課していた20%の関税を15%に引き下げ、日本や欧州と同等の水準とする。また台湾は、米政府が国家安全保障上の脅威を理由に発動する「通商拡大法232条」に基づく追加関税について、将来的な適用分も含めて包括的に減免される世界初の「最優遇待遇」を獲得した。台湾の中央通信社などが伝えた。
今回の合意に基づき、台湾側は半導体やAI分野を中心に少なくとも2,500億ドルの対米投資を実施する。ルトニック米商務長官は「台湾の半導体生産能力の40%を米国へ導入するのが目標」と述べ、供給網の国内回帰を強調した。米国側も同額の信用保証を提供し、台湾企業の進出を支援する。関税引き下げの対象には自動車部品や航空部品が含まれ、一部の医薬品や天然資源は免税となる。鄭麗君行政院副院長は記者会見で「台湾は米国の重要な戦略パートナーだと認められた」と成果を強調した。
半導体サプライチェーンの変革と「台湾モデル」の確立
今回の協定で最も注目されるのは、巨額の相互投資を通じたサプライチェーンの再構築である。台湾側が約束した2,500億ドルの投資は、単なる資金供給に留まらず、TSMCをはじめとする最先端の半導体製造能力を米国内で拡張することを意味する。これに対し、米国側は同額の2,500億ドル規模の信用保証枠を設定し、台湾企業が米国内で土地、電力、インフラを確保できるよう全面的なバックアップを約束した。
ルトニック商務長官が掲げた「台湾の生産能力の40%を米国へ」という目標は、地政学的リスクを分散させ、米国内でのチップ自給率を高める戦略的意図が鮮明だ。台湾政府はこれを「台湾モデル」と呼び、産業の空洞化ではなく、米国との深い経済的連携による「経済安全保障」の強化であると位置づけている。具体的には、半導体だけでなくAI、防衛技術、次世代通信、バイオテクノロジーの「5大信頼産業」における協力が深化する見通しである。
通商拡大法232条の最優遇待遇と法的リスクの行方
台湾が世界で初めて獲得した「通商拡大法232条」の最優遇待遇は、輸出主導型の台湾経済にとって極めて大きな意味を持つ。同条項は国家安全保障を盾に広範な品目へ追加関税を課す強力な権限だが、台湾は将来の調査対象品目についても協議による減免メカニズムを確立した。これにより、自動車部品、木材家具、航空部品などの主力製品が米市場で日本やEU勢と対等な競争条件を確保することになる。
しかし、今回の協定には米国内の政治・法的事務に起因する不透明感も漂う。トランプ政権が発動した関税措置そのものが「大統領の権限逸脱」であるとして、民主党寄りの州政府や中小企業が訴訟を起こしており、連邦最高裁の判決が間近に迫っているためだ。もし最高裁が関税措置を無効と判断すれば、今回のMOU(法的拘束力が正式な条約より限定的な覚書)の法的立場が揺らぎ、交渉の前提が崩れるリスクも孕んでいる。台湾の頼清徳政権にとっては、対米投資と軍事調達の拡大というカードを切り、トランプ政権との信頼関係を繋ぎ止めた形だが、米国内の司法判断が今後の台米経済協力の持続性を左右することになりそうだ。
[出典]
- 台美達成貿易協議 鄭麗君:全球首個取得美232條款關稅優惠(中央通訊社)
- 美台达成重大关税与半导体协议 台湾产品关税降至15%(RFI 法国国际广播电台)
