トランプ氏が示す「対中抑止力」の根拠と台湾海峡の現状
ドナルド・トランプ米大統領は2026年1月8日、ホワイトハウスで行われた『ニューヨーク・タイムズ』の独占インタビューに応じ、緊迫する台湾海峡情勢について極めて自信に満ちた見解を示した。トランプ氏は、中国の習近平国家主席が台湾を自国領土の一部と見なしている現状を認めつつも、「北京が台湾に対してどのような行動を取るかは、最終的に習主席自身の判断に委ねられている」と言及した。
注目すべきは、トランプ氏が習氏個人に対して行使していると主張する心理的抑止力だ。トランプ氏は、もし中国側が現状を変更しようとすれば、自身は「非常に不満(不愉快)に思う」と直接本人に伝えたことを明かした。さらに「習氏は、米国に別の大統領が座っているときには動くかもしれないが、私の任期中には手を出す勇気はないだろう」と断言。自身の予測不能で強硬な政治スタイルが、中国側の軍事行動を思いとどまらせる最大の要因になっているとの認識を示した。この発言は、従来の軍事的・制度的な枠組みによる抑止ではなく、指導者間の個人的な力関係を重視するトランプ流外交の真骨頂といえる。
既存の国際秩序を否定する「超法規的」実利主義
今回のインタビューで、トランプ氏は第二次世界大戦後に構築された国際的な規範や制度について「米国にとっての不必要な負担」と断じた。グローバルな権力行使に制限があるのかという問いに対し、「私を止めることができるのは国際法ではなく、私自身の道徳観と私自身の考えだけだ」と語った。この発言は、国際法を必要に応じて定義し直す、あるいは無視することを示唆しており、既存の同盟国や国際社会に強い警戒感を与えるものである。
トランプ氏のこの「実利優先」の姿勢は、米軍が介入しマドゥロ大統領を拘束したベネズエラ情勢との比較においてより鮮明になった。トランプ氏は、ベネズエラの独裁政権が米国に与える直接的な脅威や、同国が保有する巨大な石油備蓄から得られる経済的利益を強調。一方で、台湾問題については中国にとっての性質が異なると指摘し、安易な軍事介入を否定するような姿勢を見せた。これは、民主主義の価値を守るという大義名分よりも、直接的な国益や資源の確保を優先するトランプ政権の政策意図を裏付けている。
グリーンランド所有権とNATOの優先順位
さらにトランプ氏は、北極圏における戦略的要衝であるグリーンランドについても言及した。1951年の条約に基づく軍事基地の利用だけでは不十分であり、「所有権こそが重要だ」と主張。領土獲得への強い執着を改めて示した。驚くべきことに、グリーンランドの取得と北大西洋条約機構(NATO)の維持を天秤にかけるような発言も飛び出した。トランプ氏は将来的に「どちらかを選択しなければならない可能性がある」と述べ、従来の集団安全保障体制よりも、不動産的価値や資源、領有権といった目に見える資産を優先する姿勢を示唆した。
トランプ氏の第2期任期が終了する2029年1月まで、この予測不能な「トランプ流」グローバル戦略は続く。指導者間の個人的な取引と圧倒的な国力を背景にした独自外交は、東アジアの安全保障のみならず、エネルギー市場や既存の軍事同盟の在り方を根本から揺さぶり続けている。
[出典]
- 特朗普称北京如何处理台湾问题取决于习近平(RFI 2026年1月9日)
- 川普:習近平在他任內「不敢對台灣動手」(Yahoo奇摩/李昕諭 2026年1月9日)
