2026年7月6日、台湾・台中市で日本人ジャーナリストの矢板明夫氏が講演終了後に襲撃された。中国籍の容疑者は事件直後に韓国へ出国しようとしたが、台中国際空港で拘束された。台湾当局は事件の背景を捜査するとともに、中国の「民族団結進歩促進法」施行後初の越境弾圧事件となる可能性についても慎重に調べている。
矢板明夫氏が台中市で襲撃され負傷
矢板明夫氏は2026年7月6日、春雨文教基金会が台中市で開催した「NEXT CITY-春雨創生行動営-前進新台中」の講師として講演した。
講演終了後の正午ごろ、ホテル1階ロビーで携帯電話を使用していた際、中国籍の廖姓の男(33)に尾行され、突然顔面を殴られた。矢板氏は唇を負傷して出血し、スタッフに付き添われ病院で治療を受けた後、警察へ被害届を提出した。
矢板氏は事件後、「自身のこれまでの発言が事件と関係している可能性は否定できないが、いかなる理由があっても暴力は許されない。暴力によって人を沈黙させることは認められず、事件の背後関係も含め徹底的な捜査を望む」と述べ、「暴力を言論の自由を抑圧する道具にしてはならない」と強調した。
容疑者は空港で拘束 犯行前に下見か
台湾警察は事件発生後、専従捜査班を設置し、防犯カメラなどから容疑者の足取りを追跡した。
容疑者は犯行後に服装を変え、タクシーで台中国際空港へ向かい、韓国・釜山行き航空機で出国を図ったが、警察から通報を受けた移民署と航空警察局が出国審査時に身柄を確保した。その後、検察官が逮捕状を発付し、台中市警察が逮捕した。
捜査当局によると、容疑者は広東省出身で香港旅券を所持して台湾へ入境していた。事件前の約2日間、ホテル周辺で下見を繰り返していたことが判明しており、警察は犯行動機のほか、共犯者や背後の指示役の有無、資金の流れ、通信記録についても捜査を進めている。
台湾当局「越境弾圧事件」の可能性を指摘
台湾外交部は6日、「今回の事件は、中国が世界各地で越境弾圧を進め、暴力によって権威主義的な影響力を拡大しようとしていることを浮き彫りにした」として強く非難した。
行政院大陸委員会(陸委会)も、中国共産党の「民族団結進歩促進法」施行後、象徴性の高い人物を狙った初の越境弾圧事件となる可能性があるとの認識を示し、事件を軽視せず、加害者を厳正に処罰するとともに、越境弾圧への対抗措置を講じる方針を明らかにした。
台湾政府関係者は、事件は単なる治安事件ではなく、中国による越境弾圧が台湾で現実化したことを示す警鐘だと指摘した。また、中国側の関与が確認されれば、「民族団結進歩促進法」施行後、台湾当局が把握した初の越境弾圧事件となる可能性があるとの見方を示した。
蕭美琴副総統「暴力は決して許されない」
蕭美琴副総統は2026年7月7日、台北市で開かれた「2026年中国影響力ネットワーク年次総会(China In The World 2026)」開幕式への出席後、「台湾は言論の自由を非常に大切にしており、暴力は決して許されない。この事件は台湾にとっても警鐘であり、言論の自由を守るためには社会全体でさらに努力する必要がある」と述べた。
また、劉世芳内政部長は7日午後、台中国際空港を訪れ、容疑者の身柄確保にあたった移民署と航空警察局の職員を激励し、事件対応への謝意を示す予定である。
