台湾の立法院院長(国会議長)の韓国瑜氏と国民党主席の鄭麗文氏が2026年6月に相次いで訪米し、米国側の接遇や会談内容の違いが台湾で注目を集めている。韓氏は6月下旬の訪米で、米上下両院議員約40人のほか、国務省、国防総省、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の高官らと相次いで会談した。帰国前には共和党のマイク・ジョンソン下院議長とも面会した。一方、今月上旬に訪米した鄭氏は、米政府行政部門の関係者とも会談したと明らかにしたものの、慣例を理由に詳細は公表しなかった。台湾の聯合報、自由時報、中天新聞網などが2026年6月22日、29日、30日に伝えた。
韓国瑜立方院長の面会相手(2026年6月29日、自由時報より作成)
| 日付(現地時間) | 主な面会相手 | 主な議題・会談内容 |
|---|---|---|
| 6月22日 | フェニックス市副市長、アリゾナ州商務副長官、アリゾナ州立大学ヘルスケア事業担当責任者 | 台湾・米国・アリゾナ州による協力、生物医療産業のイノベーション推進 |
| 6月23日 | アリゾナ州商務局長・副局長 | 半導体、AI、バイオ医療分野での協力、台湾企業のアリゾナ州投資 |
| 6月24日 | 元連邦下院議員テッド・ヨーホー氏、民主党議員7人、超党派の連邦下院議員33人 | 台湾と米国の関係強化、台湾の安全保障、米議会図書館視察、米議会の超党派による台湾支持 |
| 6月25日 | 米国防総省・ホワイトハウス関係者、ヘリテージ財団 | 米国の対台湾政策は不変であることを確認、台湾の防衛力強化、対中抑止力、台湾海峡情勢、防衛協力について意見交換 |
| 6月26日 | ナンシー・ペロシ元下院議長、米国務省関係者 | 台米安全保障協力、経済・産業協力、無人機産業の発展、台湾の国際参加拡大、対米投資環境の改善 |
韓国瑜氏訪米、米議会と政府高官が相次ぎ対応
聯合報によると、韓国瑜氏は超党派の立法委員訪米団を率いて米国を訪問した。米側は高い水準で接遇し、韓氏は米連邦議会で多数の上下両院議員と会談したほか、国務省、国防総省、ホワイトハウス国家安全保障会議の高官とも意見を交わした。
同紙は、韓氏が立法院院長として超党派議員団を率い、米国側の正式招待で訪米したため、米国が高い水準で迎えたのは当然だと指摘した。国民党主席として訪米した鄭氏とは、立場や訪問の性格が異なり、単純な比較はできないとの見方を示した。

台湾防衛力強化で米側の期待と一致
自由時報によると、台湾大学政治学部の陳世民副教授は、韓氏と鄭氏への米側の接遇が異なった理由について、韓氏が米国で「台湾の防衛能力強化」を支持する立場を明確に示したことが大きいと分析した。陳氏は、韓氏の立場が米国側の期待と一致していたため、米上下両院議員が積極的に対応し、会談内容の公表も進んだとみている。
韓氏は訪米中、台湾と米国による無人機の共同生産を進めるため、関連法案や予算の成立に努力する考えを示した。陳氏は、今回の訪問について、議会外交として成果があっただけでなく、訪米団と米国側の姿勢が一致していた点が重要だと説明した。
一方、鄭氏の訪米では非公開日程が中心だった。韓氏は多数の米上下両院議員との会談を公開し、国務省やホワイトハウス高官との非公開会談についても、立法院が会談後の発表で議題を明らかにした。陳氏は、米国が重視しているのは韓氏の個別の政治的立場ではなく、台湾の防衛力強化を支持するかどうかだと指摘した。
鄭麗文氏「訪米の格を競うことに意味はない」
中天新聞網によると、鄭麗文氏は2026年6月22日、インターネット番組に出演し、自身と韓氏への接遇を比較する議論について「訪米の格を競うことに意味はない」と述べた。鄭氏は、台湾と米国には正式な外交関係がなく、誰が訪米しても会談相手の水準には制約があると説明した。
鄭氏は、重要なのは何人の米議会議員と会ったかを競うことではなく、台湾と米国の信頼関係を積み重ねることだと強調した。韓氏が米国から高い水準で礼遇されたことについては、「良いことだ」と歓迎し、台湾全体として対米関係を強化すべきだとの考えを示した。
鄭氏はまた、自身も訪米中に米政府行政部門の関係者と面会したと明らかにした。ただし、行政部門との会談は長年の慣例として公表できないとして、具体的な内容や相手については説明しなかった。
習近平氏との会談が鄭麗文氏訪米にも影響
聯合報は、鄭氏の訪米が注目された背景として、2026年4月10日に北京で中国共産党総書記の習近平氏と会談したことを挙げた。同紙によると、この会談によって鄭氏の政治的存在感は高まったが、米国では習近平氏への不信感が強く、鄭氏に対する見方にも影響した。
米シンクタンク「アジア・ソサエティ中国分析センター」の上級研究員ニール・トーマス氏は、中国を訪問して習近平氏と会談した人物は、誰であっても一定のレッテルを貼られると指摘した。同氏は、鄭氏が北京と歩調を合わせているわけではなく、台湾の利益を損なう意図もないことを米国側に納得させる必要があるとの見方を示した。
鄭氏はワシントンで中国語メディアの取材に応じ、信頼は一朝一夕に築けるものではないと述べた。両岸関係については、双方が平和的手段による問題解決と衝突回避を望んでいることが最大の共通基盤だと説明した。また、「九二共識(92年コンセンサス)」と台湾独立への反対が重要だとし、習氏との会談では一つの中国の原則の下で対話を続ける考えが示されたと明らかにした。
米台関係と国民党内の路線に波紋
自由時報によると、陳世民氏は、米政府や米議会が今回の訪問日程を通じて、韓氏の国民党内での影響力を高めようとした可能性も排除できないと述べた。陳氏は、その狙いについて、台湾の国防予算や米台無人機共同生産関連予算の成立を後押しし、国民党を台湾の自衛力強化を支持する路線へ戻すことにあるとの見方を示した。
聯合報も、米国側が韓氏率いる訪米団に「会うべき人物」との会談を実現させ、訪問成果の公表も迅速に認めたと報じた。同紙は、米国が韓氏を主要な対話相手として重視し、台湾与野党の調整役としての役割に期待していることがうかがえると分析した。
韓氏と鄭氏の訪米は、立法院院長と国民党主席という立場の違いがあり、接遇の水準を単純に比べることはできない。ただ、米国側が韓氏を高い水準で迎えたことは、台湾の防衛力強化を重視する米側の姿勢を示すものとして受け止められている。2026年6月の相次ぐ訪米は、米台関係だけでなく、台湾政界や国民党内の対米・対中路線をめぐる議論にも影響を広げている。
出典
- 華府直擊/鄭麗文、韓國瑜訪美待遇大不同 釋出何種訊息(聯合報)
- 韓、鄭接待規格大不同 學者:韓立場與美期望一致(自由時報)
- 鄭麗文:比賽訪美層級沒意義!韓國瑜獲高規格禮遇是好事(中天新聞網/Yahoo!ニュース)
#台湾 #米台関係 #韓国瑜 #鄭麗文 #国民党 #台湾防衛 #台湾有事 #米国議会
