AITが「台湾地位未定論」 米中台の思惑と緊張の高まり―歴史戦・法律戦、米中首脳会談のカードにも

米国が中国の史実歪曲を批判 台湾の未来は誰が決める? 未分類

AITが示した明確な立場

米国在台協会(AIT)は9月12日、中国が第二次世界大戦期の文書を意図的に曲解して台湾統一の正当性を主張していると指摘した。対象とされたのは「カイロ宣言」「ポツダム宣言」「サンフランシスコ平和条約」などであり、いずれも台湾の最終的な政治地位を決定していないと明言した。AITの発言は中国の歴史認識に真っ向から異を唱えるもので、米中台の政治的緊張を一段と高める可能性があると台湾紙の聯合報は報じた。

中国の「三つの80年」と歴史戦略

台湾の国家安全当局者によれば、中国は「国連設立80年」「第二次大戦勝利80年」「抗日戦勝80年」という「三つの80年」を掲げ、国際社会で歴史戦や法律戦を展開している。中共は「抗日戦争勝利によって台湾を回復し、中華人民共和国が中華民国を継承した」との物語を構築し、台湾を当然中国の一部と位置づけている。こうした歴史の再解釈は国際世論を動員し、台湾を国際舞台で孤立させる狙いがあるとみられる。

国際秩序を揺さぶる中国の行動

当局者はさらに、中国が9月3日の軍事パレードでロシア、北朝鮮、イランを招き、民主主義陣営と対抗する姿勢を鮮明にした点を挙げた。ロシアへの軍事・経済支援や中東での外交姿勢も含め、中国は民主社会との対立軸を際立たせ、国際秩序を損なう行動を繰り返しているとの見方を示した。米国や同盟国はこれを「行き過ぎ」と判断し、国際法や歴史の歪曲に正面から対抗する必要があると強調している。

台湾政府の明確な立場

台湾側では、頼清徳総統や外交部、対中政策を所管する大陸委員会(陸委会)が繰り返し「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」と表明してきた。さらに中華人民共和国には国際社会で台湾を代表する権利はないと強調し、主権の主体はあくまで台湾人であると主張している。

「未定論」の意味と国際法上の位置づけ

国家安全当局者は、米国が言及する「未定論」は台湾地位が不明確だという意味ではなく、「国際法上いかなる国も台湾の地位を決めることはできない」という立場を示すものだと解説した。近代国家論に基づけば主権は国民全体に帰属するため、台湾の将来を決定できるのは台湾人自身である。したがって中国が一方的に台湾の地位を決めることは許されないと強調した。

歴史学者の警鐘

著名な歴史研究者・張若彤は、この「地位未定論」が小国にとっては必ずしも保護ではなく、むしろ大国の駆け引きに利用される危険性を孕むと指摘する。ナポレオン戦争後の「協調体制」に例え、大国が「未定」の状態を交渉の材料として利用する姿勢は、小国にとって命運を左右されかねない危険な状況を生み出すと警告した。

米中交渉の文脈と外交カード

評論記事はさらに、今回のAITの発言が米中間の交渉材料として使われている側面を指摘する。米中は現在、関税問題やフェンタニル、TikTokをめぐり協議を続けており、台湾問題を追加の交渉カードとして組み込むことで「川習会」に向けた駆け引きを強めているという。

台湾に求められる慎重な対応

AITの発言は中国の歴史認識を否定する意味を持つ一方で、米国の「一つの中国」政策を変更するものではない。米国は依然として台湾独立を支持せず、「二つの中国」や「一中一台」を認めていない。こうした「戦略的曖昧さ」を誤解し、米国が独立を黙認したと読み込むのは危険である。台湾政府にとって重要なのは、過剰な期待や誤った解釈を避け、冷静に国際社会と向き合う慎重さだ。米中対立の中で過度な読み込みを避け、冷静な対応を維持することだ。


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