【特集】台湾で前例のない「大リコール」:成立条件と政治的影響

725年7月26日リコール2 台湾で7月26日、過去に例を見ない規模の「大リコール」投票が実施される。国民党の立法委員24人と新竹市長・高虹安を含む計25件のリコールが対象で、8月23日には国民党議員7人を対象とした第2波投票が予定されている。これは単なる個別政治家への不信任ではなく、国会構成や政党勢力図を左右しかねない政治決戦として注目されている。

市民運動が引き起こしたリコールの波

 2024年総統選挙で民進党の頼清徳が勝利したものの、立法院では民進党が過半数を失い、国民党と民衆党が連携して多数派を形成。両党は国会改革関連法案を共同で推進し、立法院での調査権強化や議事運営の変更などを盛り込んだが、野党主導で権限を拡大し、与党を抑え込む内容だとの批判が起きた。

 この動きに反発した市民団体は、議会の透明性や民主的運営を求める「青鳥行動」を立ち上げ、国民党議員に対するリコール署名運動へと発展させた。

リコール成立の条件

リコールは三段階で手続きが進む。

1,有権者の1%以上による提案
2,有効署名が有権者の10%以上(提案者は署名不可)
3,投票で次の2条件を同時に満たすこと:

 - 同意票(リコール賛成)が不同意票より多い
 - 同意票が有権者総数の25%以上

成立すれば対象者は即日解職され、公職給与・手当も停止。4年間は同選挙区で同職に立候補できない。失敗した場合は、残任期間中に再度リコール提案ができず、事実上の「免死符」となる。

各党と有識者の見方

与党の民進党

当初慎重だったが、頼清徳総統が6月末に「市民の力とともに歩む」と明言し、スローガン「リコールに同意票を、反共をさらに強く」に象徴されるように積極支援に転換。「親中」とされる国民党議員への批判を強めた。

最大野党の国民党
725年7月26日リコール
 朱立倫主席は今回のリコールを「民主の恥」と断じ、与党による野党攻撃だと非難。国会の多数派構成を変える政治的策略だと位置づけている。

 ただし国民党は過去に、民進党議員を対象としたリコール運動を自ら仕掛けていた。署名活動が進められたが、偽造された署名用紙が大量に使用された疑いが強まり、新北地検は国民党新北市党部書記長の陳貞容被告ら31人を文書偽造や個人情報保護法違反の疑いで起訴した。

 起訴状によると、陳被告は市内各区の幹部に指示し、党員名簿を転写させ、親睦会やボランティアを動員して署名を偽造したとされる。単に名簿を書き写したボランティア19人は起訴猶予、署名運動の発起人・補助発起人11人は偽造関与が認められず不起訴となった。

 この不祥事で、国民党によるリコール批判には疑問の声が上がっている。
 
◇参考情報


第二野党の民衆党(台湾民衆党)

第二野党、民衆党の黄国昌主席は民進党支持層が主導するリコール運動に反発し、投票日には「反対票(不同意票)」を呼びかける啓発活動を行った。
有識者の見方
 
 台湾大学の Lev Nachman教授は、今回のリコール運動について「市民運動としてこれほど多数の議員を標的にするのは前例がなく、政治的分断や社会の緊張を一層深める恐れがある」と警鐘を鳴らしている。

 一方で、別の政治学者は「リコールは有権者の憲法に保障された権利であり、有権者が制度を行使すること自体は健全な民主的プロセスだ」と評価している・

リコール後の補選と政局への影響

リコールが成立すれば、立法委員(議員)は3カ月以内に補選を行う。ただし残りの任期が1年未満なら補選せず、地方首長も残り任期が2年未満なら補選せず代理が務める。今回の高虹安市長は後者に該当し、解職されても補選は行われない。

国民党議員が6議席以上リコールされた場合、民進党が立法院の主導権を取り戻す可能性がある。台湾政治は大きく動き、政党間の力関係や地方派閥の勢力図が再編される可能性が高い。

◇参考情報

◇出典

https://udn.com/news/story/124323/8876595?utm_source=chatgpt.com

https://www.bbc.com/zhongwen/articles/cvgwzx9erylo/trad
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