TSMC機密漏洩、主犯に懲役10年の実刑判決 東京エレクトロンにも罰金刑、国家安全法適用の初事例に

経済

TSMC機密漏洩、主犯に懲役10年 東エレにも罰金刑

ファウンドリー(半導体の受託製造企業)世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の先端技術を漏洩させたとして、国家安全法違反などの罪に問われた元同社エンジニア、陳力銘(チェン・リーミン)被告に対し、台湾の知的財産・商業法院(裁判所)は27日、懲役10年の実刑判決を言い渡した。陳被告の転職先である東京エレクトロン(TEL)の台湾法人、東京威力科創に対しても、監督責任を怠ったとして罰金1億5000万台湾ドル(約7億6000万円)、執行猶予3年の判決を下した。台湾メディアの聯合新聞網などが伝えた。

判決によると、陳被告はTELでの受注獲得を目的に、TSMCの現職エンジニアらと共謀。次世代の「2ナノメートル」や、さらにその先の世代となる「14オングストローム(1.4ナノ)」プロセスに関する機密情報を不正に入手した。2022年の法改正で「国家核心技術」の窃取を厳罰化して以降、同法が適用された初の判決となった。裁判所は、情報の流出先がサプライヤーであるTEL内に留まった点や、同社がTSMCと和解し、再発防止策を講じたことを考慮し、法人には猶予付きの判決を出した。一方、機密性の高い1.4ナノ技術を漏洩させた別のエンジニアには、和解が得られていないとして懲役6年を科した。

TEL側は「組織的な関与はない」としつつ、監督不備を厳粛に受け止め、グループ全体の管理体制を強化するとの声明を発表した。

「国家核心技術」防衛へ、法改正後初の厳罰適用

今回の判決が大きな注目を集めているのは、改正国家安全法が適用された初のケースだからである。台湾政府は近年、中国など域外勢力による技術窃取から「経済的生命線」である半導体産業を守るため、営業秘密保護の枠組みを大幅に強化してきた。従来の営業秘密法に加え、国家安全法の枠内に「国家核心技術」の概念を導入し、これに違反した場合は最高12年の懲役および1億台湾ドル以下の罰金を科すという、極めて厳しい罰則を設けている。

主犯格の陳被告に下された懲役10年という判決は、単なる企業間の情報漏洩の域を超え、国家の経済安全保障を脅かす行為とみなされた結果といえる。判決文では、同被告が自身の仕事上の成果のために犯行に及び、台湾の国際競争力と国家経済安全保障を危険に晒したと厳しく指摘された。TSMCが現在世界シェアを独占し、今後の主導権を握ると目される「2ナノ」および「14オングストローム」プロセスの情報は、まさに台湾の「盾」とも呼べる核心技術であり、司法側が強力な抑止力を示す形となった。

供給網の信頼性と企業戦略の歪み

事件の背景には、激化する次世代プロセス向けの製造装置受注競争がある。検察の調べによれば、東京エレクトロン台湾法人はTSMCの既存プロセスのサプライヤーであったが、2ナノプロセスのエッチング装置受注を目指す中で、最終テストに不合格となり受注を逃していた。陳被告はこの劣勢を挽回し、最先端プロセスでの供給枠を獲得しようとして、かつての同僚であるTSMCの現職エンジニアらを説得。外部の会議室やレストランなどで密会し、社内システムにログインしたPC画面をスマートフォンで撮影させるという強引な手法で機密を収集していた。

これは、単一の企業利益を追求するあまり、ビジネス倫理を逸脱した極めて悪質な事例である。特に、情報の受け皿となった東京エレクトロン側が組織的に介入していたかどうかが焦点となったが、裁判所は、同社が捜査に全面的に協力し、親会社と共にTSMCと和解に至ったことを評価した。和解内容には1億台湾ドルをTSMCに支払うことが含まれており、法人への罰金刑と合わせるとその代償は極めて大きい。しかし、サプライヤーとしての信頼回復には、さらなるコンプライアンス体制の徹底が求められる。

この事件は、グローバルな半導体供給網(サプライチェーン)において、企業間の協力関係がいかに脆弱になり得るかを浮き彫りにした。米中対立による技術封じ込めが続く中、台湾が技術流出に対して「ゼロ容認」の姿勢を鮮明にしたことは、同地で活動するすべての多国籍企業に対し、情報管理の徹底という極めて重い教訓を突きつけている。

[出典]

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